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「••••••ふぅ、疲れた」
やっと低い声から地声に戻ることが出来た。女としての自分を殺し、男として十年の時を必死で生きてきた。あの後私は病院でずっと傍にいてくれた父の同僚だった男性・和泉さんに育てられ、剣術の道場に通わせてくれた。そこにも男として通い、厳しい鍛錬をしたことで強くなれたのも確かだ。
おかげで、今では念願だった『帝都・特定害妖抹殺部隊』の一番隊・中佐に就任出来た。軍警察自体が実力さえあれば年齢は関係ないことが幸いし、十七歳である現在でも数多の部下を持っている。部下といっても私より年下はいない。皆、年上だ。やはり『鬼神』への復讐心が糧になっているのだろう。
「それにしても••••••」
サラシがキツい••••••。男として生きる為には、そうするしかないことは分かっている。けれど、やはり女性として成長した膨らみを潰すのはキツくて痛い。
自宅では普通に取っているけれど、誰かが訪ねて来た時は厠に行ったフリをして、巻いて出て行ったりもしている。幸い、この執務室は鍵付き。鍵さえ掛けていれば、サラシを外しても大丈夫だったりするのだ。今のところ、私を女と気付いている者はいない。
偶に、"女みたい"と言われるが。
「取ろうかな」
私は軍服の詰襟の釦に手を掛けた。
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