《壱》契約ハ突然ニ

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*** 「ん、あれ••••••ここは」 「陽!お前どうしたんだ!心配したんだぞ!?」 血相を変えて駆け寄ってきた霧江に何とか返事を返す。それにしても頭が重たい。まだ妖力を入れられた衝撃の残り香があるのかもしれない。 「すまない、霧江。それはそうと、ここに桜の木がなかったか?」 「は?••••••そんなのここにはないけど。だって、ここ」 やっぱり旋が見せた幻想だったのか。路地裏に座り込んでいた私は立ち上がって霧江に謝った。左目を隠すことを忘れずに。 「謝んなって。お前が誰よりも妖が嫌いなの知ってるから。それはそうと、妖はどうなった?」 「え、あぁ――さっきから大丈夫」 「よかった。••••••さて帰って報告書、書かないとな」 「面倒になるな」 「なぁ、左目どうした?」 その問いに思わず立ち止まってしまう。霧江も気にしたのか、私の前で立ち止まって覗き込んでくる。 「あぁ、色々とあったんだ。気にするな」 「••••••へぇ」 何とか興味を逸らして前を歩かせる。それに重たい足取りで追い掛ける。 帰るのは昼間か、夕方か。休みをくれればいいのだけれど。 霧江と夜が更けていく街を歩いていく。
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