《参》愛憎ニ舞ウ胡蝶

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『胡蝶ノ花婿』••••••。この事件は二年前から度々起こる怪事件である。犯人の足取りは掴めないまま、(いま)だに未解決。 事件の概要はこうだ。二年前の深夜、壮年の男性が帝都の街を歩いているとを多数目撃した。人魂のように青白く光るものもあれば、濃い桃色のものまで様々。 それがヒラヒラと舞いながら金色の鱗粉(りんぷん)を撒いていたという。まるで、男性を(おび)き寄せているかのように。それに連れられるがままに着いていくと、ある一点のところで蝶が群がったという。 それを見れば若い男の死体が磔にされ、そこに蝶が群がっていたのだ。 さらに気味の悪いことに、その死体には花婿衣装(タキシード)が着せられており、蝶はその死体に執着しているかのように飛び回っていた。 それを目の当たりにした男性が軍警察に駆け込み、翌朝に調査を行ったところ男の(はりつけ)にされた死体と、その周りに大量のアゲハ蝶の死骸があった。 それと同様に磔にされた男の死体と、アゲハ蝶の死骸が大量に見つかる事件が過去にあと四件発生している。どれも発見されるのは、路地裏などの暗がりではなく人目につきやすい場所である。また、詳しく身元を調べると死亡した男性は全員、という事が分かった。 しかも、このご時世には珍しいことに全員が恋愛結婚(れんあいけっこん)だという。軍警察に訪れていた彼らの婚約者(フィアンセ)は、皆、涙を流し泣き叫んでいた。 そりゃあそうだろう。永遠の愛を誓うはずの相手が殺されたのだから。私はまだ帝妖隊に入って間もない時で、何もする事が出来なかったけれど。 これらの事から、軍警察内では『帝都連続男性不審死事件』。またはこの新聞同様に『胡蝶ノ花婿』と呼んでいる。
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