《壱》契約ハ突然ニ

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《壱》契約ハ突然ニ

時は、大正十年。帝都の街は浪漫(ろまん)が入り乱れる日本の首都であり、和洋折衷(わようせっちゅう)の建物が立ち並ぶ大都市。ドレスや着物を纏ったご婦人や、スーツを纏いステッキを持った紳士が日本橋を優雅に歩く。時折、若い男女が腕組んでいたりもした。結構なことだ。 そして、その中心部から少し外れた所に、一際(ひときわ)目立つ煉瓦調(れんがちょう)のビル。その内部に、私にが存在する。 *** 「藤堂(とうどう)(ひなた)中佐に敬礼!」 部下が一斉に敬礼するのを見て、開かれた一本道の廊下を歩く。横に立ち並ぶ三十人の部下にそれぞれ目を向ける。そして、その内の一人のところで立ち止まった。カツンと革靴の底が音を立て、一気にその場に緊張感が走る。 「おい、そこ」 「は、はいっ!」 私は一人の部下に目を向け、冷たく睨み付ける。辺りはさらに重い空気になり、冷や汗を流す者もいた。僕は手を部下の首元にやり、一つだけ開いていた軍服の(ぼたん)を閉めてやる。 「帝妖隊にいる自覚を持ち、いつでも身嗜みは整えろ。誰かに言われるうちはまだ甘い証拠だ。覚えておけ」 「はい!以後気を付けます!」 其奴から通り過ぎれば、先程の空気はなくなり元に戻った。こう言う時、亡き父と血が繋がっているのを痛感する。自分の執務室前まで来ると、一度後ろを向き全員に声を掛けた。 「はこれから執務がある。それが終わるまで各自、妖刀を扱う訓練だ。いつも言ってるように、帝妖隊の仕事には終わりなどない。たとえ訓練でも、命を捨てる覚悟で(のぞ)め。いいな」 「はい!行って参ります!」 全員が駆け足で訓練場に言ったのを見届けてから、執務室に入って鍵を掛けた。
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