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無駄に数の多い軍服の釦を一つ一つ取っていく。腕の部分に付いている勲章がカチャカチャと音を立てた。釦が全て取れ、白シャツ一枚になるとその釦も手早く取り去る。苦しくて、堪らないからだ。
白シャツを脱げば、胸にあるサラシと脇腹に付いた傷痕が見える。三年ほど前の鍛錬中に、妖刀によって出来た怪我である。今は痛みはないが触りたくなかった。そこに触れないようにして、サラシを緩める。段々と息苦しさがなくなっていき、特有の解放感を味わっていると、木製のドアをノックする音が聞こえて肩がビクッとした。
(誰••••••?)
何度かドアノブをガチャガチャと回して、少しだけ沈黙が訪れる。そうすると今度は鍵穴に金属のようなものを差し込まれ、カチャカチャとこじ開けようとしてきた。
(拙い••••••!)
何がなんでも入ってくる気だ。完全にサラシは取れていないけれど、これでは女だということがバレてしまう。私は慌てて、すぐ隣にある自分専用の厠に駆け込んだ。すぐに戸を閉めて鍵を掛ける。緊張が解けて、ズルズルと床に座り込んでしまった。ドア越しに声が聞こえてくる。それに耳を澄ましてみた。
『ひーなーたー!••••••あれ、執務してるって聞いたんだけどな。何でだ?』
思えば、空き巣みたいに入ってくるのは彼奴しかいないじゃないか••••••っ!
私はサラシをまた巻き直し、軍服の釦を一つ残らず閉め、一度咳払いをしてから執務室に戻った。
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