白夢

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 小町がそう言うと、白い髪の少女は少年を抱きかかえ、雪の上を走った。粉雪のような軽やかに氷の上を滑るように足を運ぶ。その足元には罅は生えてこない。まるで彼女だけ別世界にいるようだ。その姿を目で追いながら、這うように氷に上る。そのまま、時折水に落ちながら陸までたどり着いた。十年前とは違い、意識を保ったままここまでたどり着けた。その甲斐あって、彼女に出会えた。  小町が陸に戻ってから数分の内に救急車が駆けつけ、少年を病院に運んだ。小町は濡れた身体をコテージのストーブの前で温める。十年前とは違い、大人になったとはいえ寒いものは寒い。手先の感覚がなくなる臨場感には未だ慣れない。その時、長身の少女がステンレスのカップを片手にコテージに入ってきた。 「大丈夫ですか?」 「ああ、大分温まった」 「これ、よかったら」
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