白夢

2/16
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 コテージの中に布団や暖房などの設備があるのに、敢えて寒くて風吹く外にテント張って、そこで寝る理由なんて趣味以外何物でもない。だが、十年前からここに泊まるにつれ、キャンプが趣味になっていった。故にキャンプで寝る不便さにはもう慣れた。 「よーし。行くか」  自分のテントを張った後、小町は歩き出した。今日は小町のテント以外に二つ立っている。まずはコテージ前で荷物を下ろしている家族連れに狙いを絞った。どうやら、その家族もわざわざ外で寝るような趣味の持ち主らしい。 「こんばんは」 「あら、こんばんは」  若そうな奥さんが応対する。小町はその奥さんの隣で雪にはしゃいでいる子どもを横目で眺めながら、話を進めた。 「今日は家族でキャンプですか?」 「ええ。今日は息子の誕生日なんです。誕生日にどこ行きたいって言ったら、キャンプしたいなんて言ってね。こんな寒い中ここにね」 「なるほど。キャンプはよく行くんですか?」 「ええ。特に主人はキャンプ好きでね。毎年いろんな所に行ってるんです」 「そうなんですか」 「そうだ。この湖畔キャンプ場で髪が白い少女を見たことありませんか?」 「髪が白い少女?」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!