白夢

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「はい。髪が雪のように白い少女。アルビノってやつです?」 「んーん。私は見たことないなあ。そんな人がいるのねえ」  やっぱりダメか。何も珍しいことじゃない。そんな目を引く容姿なら、記憶の片隅に残ってる筈だ。小倉は累計百回目くらいのため息を心の中で吐いた。そもそも街中ですら見たことがないのに、湖畔キャンプ場という限定された場所で見かけるわけがない。 「お、兄ちゃん。どうした?」  その時、主人が車から降りてきた。肩にクーラーボックスを下げ、白い息を吐いている。 「こんばんは。奥さんに人を訪ねていたんです」 「人?」 「はい。白い髪の少女をこの湖畔で見ませんでしたか?」 「いいや。俺は20年前からこの湖畔に来ているけど、そんな人見たことないなあ」  主人は顎に蓄えた髭を撫でながら言った。何百回も聞いた「知らない」という言葉。小町は問いに対して「知らない」と返ってくるだろうと予想しながらも。「知ってる。みたことがある」と答えてほしくて聞き続ける。 「悟志! 湖に近づいちゃダメでしょ!?」 「えー。お母さん。湖に氷張ってるよ?」 「ダメよ。悟志落ちちゃう」
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