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「確かにな。そう言えば、十年くらい前かな。この湖に落ちて死んだ人いるらしいからな」
「十年前?」
「ああ、確かそのくらい前にな。その後もちょくちょく落ちた人いるらしいが、俺はよく知らない」
その落ちた人が自分だと小町は言えなかった。その時助けてくれた少女を探していると正直に言えなかった。十五歳の夜に悟志少年のように興味津々で氷に登って落ちた何て間抜けな話言えるわけなかった。
「ありがとうございました」
小町はそう言い、そのコテージを後にした。三分程湖畔に沿って歩き次のコテージへ行く。そこでは三人の女性が火を囲んでいた。先ほどの家族とは違い、外にテントを張って寝る趣味はないようだ。そこに近づくと、犬が駆け寄ってきた。
「がうー」「かあー」
雪のような白い犬だ。全身が厚手のタオル生地のような毛皮に身を包んで暖かそうだ。その背中には小町が探してる少女のようなアルビノの鴉が止まっている。人懐っこいのか、小町が近づいても逃げるそぶりは見せなかった。
「ちゃーす」
「ひよこの湖」と書かれたTシャツを着た髪の乱れた女性が軽く手を上げ挨拶をする。
「こんばんは」
「こ、こんばんは」
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