白夢

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「はい。貴方が探している白い髪の少女はすぐ近くにいます」  心臓の動機が早くなった。小町自身が吐く息の音が聞こえる銀世界では、心臓の音もハッキリと鼓膜伝いに響き渡る。震える手で少女から貰った目薬をさした。すると、徐々に視界が変化していった。全体的に視界に薄い靄のようなものがかかる。例えるのなら薄ら曇った眼鏡をかけているよう。その視界の先に小町は漸く見つけた。  湖畔に佇む白い髪の少女。頭に被っているシルクハットもマフラーもピーコートもズボンもスニーカーも雪のような真っ白。唯一その瞳だけ炎を閉じ込めたかのように赤い。うろ覚えだった記憶の解像度が徐々に上がっていく。彼の記憶の中の彼女が現実に降り立つ。ぼやけた視界で小町の手を取った彼女の姿がいまそこにある。 「……私、あの幽霊と少し話したんですけど、あの人十一年前に亡くなっているんです。この湖畔で溺死しています」 「十一年前!? そんな……」
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