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小町は動揺をかき消すように首を横に振った。なら、小町は誰に救われたのだ。十一年前に彼女は死んでいるのなら、十年前に救ってくれたのは誰なのか。姉妹にしては似すぎているし、そもそもアルビノの姉妹なんて聞いたことすらない。
「た、助けてください!」
その時、奥さんが息を切らしながら駆け寄ってきた。
「どうしたんですか!?」
「さとしが……! 子供が湖に!」
「何!?」
視界をぶん殴られた気がした。小町はその声に促されるように湖畔に駆けた。その視界の先で、直線で描かれたような水平線に罅が生えていた。子供が湖に落ちて藻掻いている。
「私消防に――」
「ダメだ! 消防なんか待ってたんじゃ死んじまう!!」
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