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さて、勇者一行と離れてしまえば、普通魔界ですることはないと言える。今するべきことがあるとするなら、人間界に還る、それのみだ。
ただし。
「その前に俺は俺の目的を果たさないとな」
ロイスが勇者についてきた理由であり、勇者一行を追い出されても平然と、むしろ嬉々としていられた理由。
すなわち。
魔界の遺跡さがし。
それこそがロイスの最大の目的だった。
魔界は人間界よりずっと昔からあったといわれている。
ある時、魔界から持ち帰られた遺跡のカケラがあった。人間のもつ技術力では、到底つくることのできないもの。
それは魔族が人間よりはるかに優れた文明を持っている証だった。
ロイスにとって大事なのは、それが魔術に関しても言える、ということ。
──魔界には、人間界にはない古い魔術に関わるものがあるのじゃないか? 人間の知らない未知の魔術が存在するのではないか?
遺跡を見つければ、古い魔術の痕跡や魔術の書、魔力の籠った装飾具などに触れ、知ることができるかもしれない。
ロイスには他に何もなかった。魔術以外なにもない。
なのに、人間界にある魔術はもう研究し尽くした。
退屈だ。
退屈。
ただただ退屈で、だからロイスは魔術のその先を求めていた。
──魔術のことをもっと知ることができるかもしれない。
ロイスはただ、自分自身の退屈と探究心を紛らわせるために、魔術を求めていた。
彼には、他に何もなかった。
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