魔界と目的

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 しばらく歩いたところで、ロイスは小さく空を仰いだ。  (あて)もなく歩いて見つかるほど、魔界は甘くはなかったらしい。   「そう簡単には見つからないか」    一人つぶやきながら、今度は周囲に視線を(めぐ)らせた。見える範囲にそれらしいものはない。  遺跡といっても、これといったはっきりとしたビジョンはなく、ただ、魔界にある古い建造物を総じて遺跡と呼んでいるだけだ。  そのどれかを、場所もわからず、あるかどうかすら不明のまま探しているのだ。    こんなところに人間はいやしないが、もしいたとして、ロイスの姿を見たならば、まさか目的地が決まっていないのに歩いているとは思いもしないだろう。  それほど堂々とした歩みを進めているが、残念ながら事実上の迷子である。 「明確な目印がなければみつけるのは絶望的だよな……」  ロイスはため息まじりき肩をすくめた。  ふとロイスは視線を感じて顔を巡らせた。  ついと目が細められる。    どこからか見られている。  視線を感じる。  けれどもそれがどこから向けられている視線なのか、なんとなく方向はわかるが、はっきりとした距離、場所が把握(はあく)できない。  警戒心が滲み出る。  ロイスが現在周囲に張り(めぐ)らせている、一定空間内の害意ある生物を探査(たんさ)索敵(さくてき)する術、それはだいたい直径三百メートルほどの円状で展開されている。その範囲に引っかからないということは、さらに外からの視線ということになる。  ──よくそんなに遠いところから、これほど鋭利な視線を向けられるものだな。  ロイスは内心で感嘆(かんたん)した。  この距離で遠距離攻撃を仕掛けてくるだろうか。それとも異常な移動能力を有している魔物だろうか。ロイスの頭の中で様々な仮説が立てられるが、どれも確証を得られるものではない。  ロイスはやれやれ。と肩をすくめた。    ──なんの()てもなく歩くより、聞いた方が早いしな。はてさて、相手はどういう反応をするかな。    ロイスは乱暴な思考をもちつつ、視線を感じた方角へ方向転換をした。
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