遺跡と出現

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 ロイスは「あっ」と思わず声を上げた。  森の鬱蒼(うっそう)とした木々が低草(ていそう)に居場所を貸しているのだろうか、そこは、鬱陶(うっとう)しいほど生い茂っていた木々がほとんど生えていない場所だった。  見上げれば上空はぽっかりと穴が開いたようになっていて、当然のように空からは月あかりが照らしている。    ──月は、あったのか。    そんなことを思いながら、ふらふらとその月光の下に歩みを進める。視線は月を(とら)えて離れない。思っている以上にロイスも光に()えていたのだろうか。ひどく光を眩しく感じだ。  ふと、気配を感じてロイスは視線を下げた。  月光に照らされた空間のその奥、再び鬱蒼(うっそう)とした暗い森に差し掛かるであろう場所に、それはあった。     森の巨木に(から)みつかれて、まるで自然と一体化したかのような巨大な遺跡。目を細めれば、闇の中に人工的に積み上げられた美しい石の壁がみえる。ところどころ崩れているが健在だ。  ロイスは思わず感激の声を上げた。 「これだ。これを俺は探していたんだ」  抑えきれない感情に、速足になる。  ロイスの気持ちは最高潮にあった。これはもう大発見ともいえる。  ──いけない。落ち着け。門番でもいたら厄介だ。静かに……。  はやる気持ちを抑えて、一旦足をとめ、ゆっくりと遺跡に近づいてみる。    ──でかいな。    高さもそうだが、思った以上に遺跡は奥行きのある建物のようだった。    どの部分も石で積み上げられていて、木製のものは見受けられない。扉らしきものもなく、あってもアーチ状にくりぬかれたゲートのようになっていた。そのゲートも、ロイスの身長の三倍はあるだろうか。
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