戦闘と発端

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戦闘と発端

「取引しましょ」  倒したゴーレムの残骸(ざんがい)を脚で踏みつけていた魔術師は、その言葉に顔を上げた。  目の前にいるのは一人の少女。  美しい(つや)のある髪を(なび)かせ、こちらをキラキラとした青い瞳で見つめてくる。  まるで人形のような彼女は、片手を差し出して同じ言葉を繰り返した。 「私と、取引しましょう」  魔術師は思う。  ──どうしてこうなった。  彼には何もなかった。  魔術以外何もなかった。  唯々(ただただ)退屈だったのだ。唯々(ただただ)探究心に忠実だっただけだ。そしてただ、放って置けなかっただけなのだ。  それだけだ。  それだけだったから、軽率な行動をとってしまったのは間違いない。    こうなってしまった原因は自分にあるのだということは確かだった。  ことの発端はなんだったのか。  数時間前の出来事を思い浮かべて、魔術師は顔を引き()らせた。
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