逃亡と祭壇

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 祭壇と思わしき場所に横になって眠る少女。    年齢は十二、三歳程度だろうか。(あざ)やかな金色の長い髪は絹のようで、ふっくらとした(ほお)は柔らかそうだ。  肩は上下しており、すやすやと眠っているのがわかる。  すやすや。  ──なぜ?  ロイスは今度こそ悲鳴を上げそうになった。主に嘆きの方向で。  目の前には少女。後ろからは轟音が聞こえてくる。近づいてくるゴーレムの足音だ。  決して前方の少女が虎というわけではないが、前後を恐ろしい何かに挟まれ身動きの取れない状況。そんなふうにロイスは思った。  ──この少女を見捨てていいものか?  そんなことで悩んでいる間に、背後から響いた轟音。飛び跳ねるように振り返れば、ゴーレムが部屋へと入ってきていた。  籠城作戦をいまからとっても間に合うだろうか。と悩むが時間はない。まっすぐ奴は近づいてくる。  ロイスは少女とゴーレムを交互にみて、目を閉じて数瞬、カッと目を見開いた。
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