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だけども、彼女はまだ立ったままだった。 何かあるのだろうかと思ったら、なんとバリエーションについて聞いてきたのだ。 「では、どのような作り方になさいますか? 当店はお客様の自由なスタイルに 作り上げます」 はて? トーストでそんなに種類があるのだろうか。 「お客様のイメージを教えてくださいませ。 生卵のままという訳にはいきませんから、色々調理いたします。 ゆで卵をつぶしたサラダ風や スクランブルエッグを乗せると関東風、 卵焼きなら関西風になりますね。 あ、パンに乗せるのか挟むのかだって大事なポイントですよ。 まさしく、“なんでもござれ”です」 トーストひとつで関心してしまった。 さすがは専門店だと思った。 色々気になるけれども、僕は想像していたものを話してみた。 「パンとスクランブルエッグが並んで出てくる感じですね」 なるほど、と彼女はエプロンのポケットからメモを取り出して書いていった。 そして、朝食のようですねと感想をつぶやいた。 「スクランブルエッグは王道の料理になります。 期待してお待ちください」 そうしてお辞儀をした彼女は キッチンに向かっていった。  ・・・ 僕は待つ間にいつもの様にスマートフォンを開くのではなく、 キッチンの方を見ることにした。 彼女がしっかり調理できるか見ておこうと思ったからだ。 アルバイトの店員はうんと背伸びして棚からパンを取り出していて、 袋から1枚抜き取ったところでこちらを見てきた。 ……あ、視線に気づいたかな。 慌ててスマートフォンを開く僕。 思い出したように質問する彼女。 「パン、焼きますか?」 ……視線に気づいたわけではなかったようだ。  ・・・
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