プロローグ

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プロローグ

僕はある光景に足を止めた。 こんな東京は都心の路地裏に一軒のお店を見つけたのだ。 周りの建物はシンプルなコンクリートの外観なのだけれど、 ここだけレンガ調の佇まいになっているのが、 レトロな雰囲気を醸し出していた。 ドアの横に立てられている黒板が言うには、 <卵料理専門店「piyo-piyo」> ピヨピヨ? ヒヨコだろうか? <OPEN>と書かれた、 ヒヨコの形をしたドアプレート。 専門店と銘打っている、 自信に溢れた肩書き。 なんだか可愛らしくも滑稽な姿に興味を覚えたのだった。 食指が動いた僕は、とりあえず入ってみることにする。 開くドアのリズムに合わせて、 まるで供え物のように置かれている花がゆっくりと揺れた。 ……ドアチャイムがふたりの関係を祝福するメロディになるとは、この時は気づかなかった。
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