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平穏の均衡は突然崩れる。
婆が身罷った。
私が七つになったばかりの未だ浅い春の日。
朝起きると、骨と皮ばかりの小さな身体は布団の中で既に冷たくなっていた。
『死』という言の葉は概念として知っていたものの、これほどの重みを持って伸し掛ってくるなど思いもしなかった。
戸惑い狼狽え、やがて言い知れぬ悲しみが心を絡めとる。
私は三日三晩、婆の乾びた亡骸に縋り付き声をあげて泣いた。
そして四日目の夙めて。
白んでいく空を見上げながら、郷へ下りる決意をした。
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