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2章─3 ペットボトルのキャップは分別しよう
そして場所はとある金持ちの無料駐輪場に移り、僕は新しい武器を探索中である。あのまま旧道周辺で武器を探してももう見つからないと判断した僕は新たなる武器を開拓しに来たのである。
だがそこには武器になりそうな、弾丸になりそうな物はなかった。分かっていたことなのに少なからず落胆した。
けれどもう1つ良い意味で予想していたこともある。それは飲み物の自動販売機があることだ。別に喉が乾いていたから探していたのではなく、本当の狙いはその横のゴミ箱の方である。
僕はゴミ箱を漁り、ペットボトルからキャップを分ける。
ゴミを漁っている自分を客観視すると、なんだか酷く自尊心が傷つけられた気がするけれど、ゴミの分別を行っていると思えば自分が良い奴のようにも思えた。
あらかたキャップを集め終え、僕の心にエコの精神が芽生え始めたその瞬間───
やはり今回も今回とて、唐突に僕の意識外から僕の眼前にあの怪物は現れた。
「んぁ?」
阿呆な声が出てしまった。
さっきまで戦っていた怪物が僕に追いついたのか、テレポートでもしてきたのかと思った。
しかし、今僕の前にいるのは五体満足な怪物であり、随分とスリムな体型になっているではないか。
「まさか、新手の敵か!?」
いやしかし、それは考えられない。同じ位の歳なのにえらく上から目線な女──閑庭富魅娘は言っていたではないか。
小さい方の公園、古い方のコンビニ、潰れそうな歯医者、潰れた駄菓子屋、
お酒が買える自販機
ここを通れば怪物が現れると。だから僕はあえて避けていたのに。僕はすぐに携帯を取り出したのだが、そこに映っていたのはバキバキの画面と砂嵐だった。通りで連絡がないわけだ。
恐らく連絡はあったのだろう。あの女が気づかないはずがない。
こうなればもう一体倒すほかなくなった。
しかし、驚きで一瞬体が固まった僕は奴に先制攻撃を許してしまった。
シンプルに右ストレート。攻撃速度は両腕を失った怪物よりは早く、人並み程度のものだった。人並みといってもプロのボクサーレベルではあったのだが。
僕は結構疲労も溜まっていたし、万全の状態
でも避けきることは出来なかっただろうが、
僕は避けた。
その後のコンビネーションも避けに避けた。
避けながら不覚にも笑ってしまう位、余裕をもってだ。
怪物にもし意思があるのならかなりの恐怖を感じたんではなかろうか。
なぜなら、
自分の攻撃をニヤついて、カバディカバディと呟きながらかわしているのだから。
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