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2章─5 竜王のミス
駐輪場の先にある森はかなり深い森で歩くのもままならない、街の人も近ずかないような場所である。そんな所に逃げ込めばいくら潜兵がいないとしても僕が勝つのは厳しいだろう。恐らくあの怪物たちは森の自然防壁なんてものともしないだろうし、僕の武器となるボールなんてものも落ちてはないだろう。それに僕のポケットに入ってるキャップも役に立つかはまだ分からない。
もしキャップが真価を発揮したとしても勝率は五分五分か少し向こうに分があるといったところだろうか。命をはるには少し心もとない数字である。
逆に森の方に行かないという選択肢を考えてみる。ボールなどはいくらか落ちてるかもしれないが、敵将は駐輪場以外にも潜兵を潜らせているだろうから今より状況が悪化する恐れがある。これ以上敵を増やすのは極力避けたい。
これはデメリットに対してメリットが少なすぎる。
だけれどいくら敵が増えようが最速最短でいけばもしかしたら大金星をあげれるかもしれなかったら話は変わってくるだろう?
この戦い中、僕はずっと後手に回っていることは確かめる必要もないが、それは相手が常に先手を打ってきているということだ。この盤面を見る限り、僕は顔も知らぬ者の手のひらで踊らされている訳でこの状況も奴の作戦通りでなんだろう。しかし、奴はこの盤面を作ることに
こだわり過ぎたと言わざるを得ない。
だって新たな怪物が現れたということは、
まだこの付近に王将がいるってことの証明なのだから。
奴は自分が打ってきた盤面が自分の居場所を示すという、遠距離型の能力者としては落第点級の行いをしたのだ。
そういうことで現在、僕は自分の命を狙う顔も知らぬ者と対峙しているという訳だ。
その男は公園のど真ん中に突っ立っていて、見ただけで敵だと分かるようなオーラをしてはおらず。こっちだこっち、お前は俺を探しているんだろう、と言って来なければ普通にスルーしてしまうような普通の人間だった。
「やっと会えたな、このタコが」
思わず出た言葉だが、言わずにはいられなかった。
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