推理にもならない

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兄貴の部屋に入ると後ろめたさと好奇心がうるさくなるので、あれ以来立ち入っていない。 「あら、お帰り」 また寄り道したの?髪に可愛いのがついてる。 段ボール箱に隙間無く詰められていく本と菓子は、「親心」というらしい。頭を振ると、箱の中にピンクが舞い落ちた。 「郵便局に行ってくるから、留守番よろしくね」 1番上に封筒を2つ重ねて箱を閉じる。母さんの字とは違うそれに、見覚えがあった。ガムテープで封をされた今、確認しようはないけど。 「うん」 玄関の鍵が閉まる音を、ぼんやりと聞いていた。そんな俺の妄想を、兄貴は「根拠がない」と一蹴するだろうか。 スマホを開いて兄貴に送るメッセージは、もっと単純だ。 「桜が出てくる話のオススメって、何?」 忙しいだろうから、返信がいつになるかはわからない。だけど、今日は久しぶりに兄貴の部屋にお邪魔しよう。本棚は好きに使っていい約束なのだ。それでもし、例のアルバムとクッキー缶がなくなっていたら、俺の初勝利ってことでいいのかな。 もちろん、優しい俺は黙っていてあげるけど。
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