# 恋愛事情

1/1
前へ
/1ページ
次へ

# 恋愛事情

学祭の後、 数日間の休みがあった 莉桜ちゃんとゲームセンターに遊びに行ったが、 普通に楽しかった… 最初は遠慮ばっかりだったけど、 だんだんと慣れてくると冗談も言えるくらいで、 普段頑張り屋だから、 少しでも息抜きできたならいいんだけど。 俺はこの時、 いろんなことに巻き込まれはじめていた…… もう、学校に行くことも… 無いかもな… ゲーセンから帰ってシャワーでも浴びようか 風呂場に入る。 その前にLINEでもしとくかな… “莉桜ちゃん、 今日は楽しかった。 本当にありがとうね… 俺さ暫く学校には行けなくて、 ………もう行かないかも知んない。 それで何が変わるってわけじゃ無いけど、 莉桜ちゃんと楽しい思い出ができてよかったよ。 もし学校戻れたら、 また遊んでね。 玲に宜しく… …それじゃ。” ザァーーーーと、シャワーの音が響く… 体の傷が痛々しい… つい最近乱闘になった時のやつとか… 腕の注射後とか… 薬物、投与されたんだよな… 抜け切ったとはいえ、 またあんな風になることもあんのかな… …… 莉桜ちゃんといると 男女としての釣り合いよりも… 今ある俺の立場から、 絶対傍にいちゃいけないような子…なんだよな… …… 不意に携帯が揺れ、通知音が風呂場に響く… 返事早いな… シャワーを止めてタオルで頭を拭きながら 携帯の内容を確認する。 “私も楽しかったです。 …そうですか、 教えてくれてありがとうございます。 春輝先輩の私との思い出が 楽しい記憶の私で良かったです! 前みたいに、何にも言わずにいなくなっちゃうのは寂しいので、言ってもらえて嬉しいです。 帰った後にこんな事言うのも変な話なんですけど…… 私、多分春輝先輩の事好きです。 自分の気持ちなのに、 多分なんて変ですよね 私今まで恋愛ってよくわかんなくて、 でも、この前千雪先輩と付き合ってないって 聞いた時にホッとしたんです。 きっとこれが恋なんだなぁって思いました。 だからといって春輝先輩と付き合いたいとか、 そんな事は考えてなくて! 今は部活で頑張りたい気持ちが強いですし、 一方的ですけど、 私の気持ちだけ伝えたくなっただけなので! 気にしないでください!” … 純愛 だな … 純粋で、優しい「好き」俺には無いものか… “そっか、 めちゃくちゃそういう風に思ってくれるの嬉しいよ。 ありがとう。 気持ちって難しいよね。 俺もね好きってなんなのか分からなくなってさ。 友達とか恋人とか、 実際のところあんまりうまく行かない。 莉桜ちゃんは、 俺の事なんでもできるなんて褒めてくれるじゃん? 全然ね…そんな事ないよ。 本当の俺を知ったら、 きっと嫌いになっちゃうだろうなぁ… 気持ちだけ受け取っておくね。 もっといい人と恋して、 幸せな人生を歩んでね。 本当に、 今日はありがとう。 莉桜ちゃんの優しいところとか前向きなところ、 俺も好きだよ。 学校部活に勉強に、 頑張って。 いってきます。” … 好きって何だろうか … … 莉桜ちゃんの今くれた好きってさ、 … 多分、本当の俺を知らない“好き”だよね… 俺が昔好きだった奴を思う気持ちは、 支配してしまいたい、 俺のものにして、離れないように縛り付けたい。 何処にも行かせたくない… 独占したい  ーーー… 俺だけを見ていて欲しい… そういう感情だった。 … 歯止めが効かなかった俺は、 最後まで嫌われたままだったんだろうか… 普通にできていたこともあった、 でも何回も喧嘩した… …… 喧嘩して、仲直りして  … で … その先は消えた   ーーー … もう、恋愛とかしたくねぇな … … したくないけど、 … 欲 しかった。 この気持ちを、発散できる場所が欲しかった。 ただ、   それだけ    。 … 連絡を取らなくなって暫く… 剣ヶ崎高校の学園祭がやるらしい… “春輝先輩、ケンコーの文化祭…行きますか?” どうして? 莉桜ちゃんから急にLINEが来る… あんな突き放すような言い方したのに… “行かないよー? あぁ、 お化け屋敷、一緒に入る人いないの?” お化け屋敷好きっぽかったからな… …でも友達が居なかった訳じゃない…だろうし… あぁ「好き」だから… 会いたいから… そういうこと…なんだろうか… “そ、そうですよね… お化け屋敷?! ケンコーの文化祭の出し物であるんですか?! ケンコー行ったことなくて、仲良い先輩がバンドするので行くので、向こうで会えないかな〜と思って聞きました。” 一緒に行きたいんじゃなくて、 居るなら会いたい…か… 弱いな… もっと求めて来ないのかよ… それが普通の好きって感情なのか? やっぱり俺って異常なんだろうか… “さっき見てたら肝試しだった。 俺昼間は動けないから、 肝試し侵入するなら、 まぁ、一緒に遊べるよ。 後夜祭ってシキコーのやつ駄目だろうけど旧校舎とかは気になるし。 あ、でも俺学校には行ってないし、 内緒にしてくれるならだけどね。” 少しだけ腹が立っていた。 好きって言ったくせに踏み出せないのは、 俺のせいだって解ってる。 ……何をそんな求めてんだか…… 冷静になって考えた、 …期待するのやめようぜ… どうせ、… “なんか、ドラマのワンシーンみたいですね! 誰にも内緒で会うなんて。 だったらこういうのはどうですか? 旧校舎に2人で忍び込んで、誰だかわからないような格好して皆を驚かすとか… お化け屋敷のシナリオに無い部分でお化けが出たら面白そうじゃないですか?” ……莉桜ちゃんを脅かしてやろう…… …この言い分の時点でそういう考えが自分の頭の中にあった… いっそ全部台無しにして めちゃくちゃにして泣かせてやりたくなるんだよな。 “ドラマかぁ…いいね。 じゃあ秘密で… お化け役になろーか。 誰か、さくらになってくれるかなぁ。 ケンコーに誰かを騙すのとか得意そうな子いないかなぁ〜 俺たちを見てくれるって子が必要だよね。” “あ、確かに……” “あんまりケンコー知り合い居ないんだよなぁ。 莉桜ちゃん居たりする? まぁ、旧校舎気になってるから、 普通に一緒に見て回ってくれたら嬉しいよ?” “1人、仲良い先輩がいてます。 多分、その人なら口硬いですし春輝先輩の事そんなに知らないと思うんですけど…橘絢世先輩って知ってますか?” これが、絢世との出会いでもあった。 見えないように長袖で隠した腕の傷がちょっと気になったのは… あの日だったな… まさか 後に仲良くなるなんて思いもよらかなったけどさ… “ん〜知らないけど、莉桜ちゃんが平気だと思うなら平気な人かもね……お化け見た!って言ってくれんのかな? なんかホラーな俺たちの写真でも流してもらおうか ネットに” “それがいいですね!” “絢瀬?だっけ?声かけられそう?” “はい!今連絡してみました〜!” “ありがとう。 返事きたら教えてね〜… …取り敢えず寝る…〜” “今返事来てやってくれるらしいです!! 寝てる間にグループ作っておきますね おやすみなさい”    “”返事はぇえ…“” 思わず口にしながら携帯に打ち込んだ… ……むしゃくしゃ…するな? …寝ようかと思ったけど、このままLINEしよう… “ねぇ、莉桜ちゃん… 俺に好きかもって言ったけど… 普通のままでいいの? 声かけてくれたのは嬉しかったけどさ… 告白?とかしてくる子っていろいろ望んでくるのが当たり前なイメージだったし、 莉桜ちゃんは別に付き合いたいわけじゃないって言ってんじゃん? てか、なんかしたいってか、 一緒に遊べればそれでいいやってことなのかなぁ。? 俺さ、正直本当に女の子とは普通に遊ぶだけじゃない関係を持ってばっかりだから、 ハッキリ言ってさ、 そーいうのって幻滅すんじゃない? 莉桜ちゃんには意図的に手を出してないけどさ? そーいうのって、 ちゃんと意味伝わるのかなぁ〜?” 好きとか愛してるだの言われたいやつが たくさん居て、夢ばっか見てて、 彼氏がいるけど浮気したい女だの、 世の中には溢れててさ… 俺はそんな女と平気で遊んでる。 飽きたら捨てるけど楽しいうちは、遊んでる。 ずっと前に止めようとした、 止めようとするのに、 結局自分の心の傷が開くような感じがして、 痛くて堪らなくなる… ……ずっと、やめられなかったーーー そんなことする訳ないって信じる言葉を聞いたら、 「やってないよ」って否定して隠してあげた。 そうやって誰かの都合に合わせてた。 そんな俺でも好きでいられんのかな… “うーん… 春輝先輩の事はお姉ちゃんや友だちとは違う意味で好きです! でも、今まで通り接してくれたり、 一緒に遊んだり春輝先輩の楽しそうな姿見られるだけで私は嬉しくなります! なんか春輝先輩が楽しそうだと、 心がポカポカするというか… 日向ぼっこしてる気分になるんです その、春輝先輩が、 えっと…莉桜の事大人にしてくれるって言うんなら…嫌じゃないですけど…… 男の人って初めての女の子は面倒って、 部活の先輩が言ってたし…………” あぁ、これは… …所謂あれだ…夢見ちゃってるよな… そうさせてる俺も悪いんだとは思うけど… “なるほどね、 なんとなく理解できた。 最近あんまり楽しいって感じじゃなかったから、 悩んでたけど… そっかぁ… 莉桜ちゃんは、いろいろ知れたらいいけど 迷惑になりそうだから怖いなって事だったって 意味で合ってる? どっちかというと、 はじめてなのって年齢的にも多いんじゃないかな?? それから面倒か面倒じゃないかは先輩が決めんじゃなくて、相手が決めるものだから怖がる必要ないと思うなぁ… そっか、 俺が今置かれてる状況もなんとも言えないけど〜… また学校普通に戻ったら、 遊びながらいろいろ考えてみよっか。 なんかさ、 心配になっちゃって。 俺もちゃんと学校に戻るのか今の状況じゃ わかんないけど、 莉桜ちゃんにとってはじめてのことが多くてよくわからないなら、 一緒に考えてみる? 俺に 出来ることはしてあげるよ。 好きって言ってくれたの嬉しかったし。” 半分が冗談で、半分は本当のことだった。 好きって言われるのは嫌いじゃない。 嬉しくて当たり前だ。 …半端な優しさで、莉桜ちゃんを傷つけるかもな… でも、こうやって測っていかないと… 俺が恋愛できんのかさえわかってなかったから… ……利用させてもらうよ…… ごめんね… … 真っ白な髪に真っ黒な服… 珍しい自分の姿を鏡で見つめる… ……悪くないんじゃね? 時刻を見ると少し遅れ気味だった… 急がないとな… 剣ヶ崎高校の旧校舎はガタガタで、 ちょっと足場が悪く嫌な音がした… 落ち合う場所……ここだよな? 不意に見慣れた人物が目につく、 わかりやすいとこにいんなぁ… あれじゃ、すぐバレるだろ… 背後から忍び寄って、 よくある女子が好きそうな状況を作ってみる。 「見つけた〜だーれだ?」 目隠しをしてあげると、ビクッと体を震わせた。 「…!!!!!は、春輝先輩? びっくりして声出ちゃうところでした」 「せいかーい!頭白いの似合う?」 「わ〜」 怖かったのも一瞬か目を輝かせてるのが暗闇でもわかるように俺を見てきた。 「声出していいよ?♡ 莉桜ちゃんの悲鳴ききたいよね。」 「ピンクも金色も素敵ですけど白もいいですね!みんな集まってきちゃいますよ?」 「やったね あ、ちょっと…しー………」  莉桜ちゃんの口に指当てた。 「んっ?」 ワザとストーリーのように何か得体の知れない生物を作って ……なんかいねぇ?なんて小声で言ってみる。 「気のせいか…音?風か?」 「驚かそうったって、、、、??」 「いや、ほら…あの奥の部屋からさ」 「肝試しの、演者でもいるんですかね…でも、あっちルートではなさそう…」 「ちょっと言ってみようぜ?」 「いいですね」 で、お決まりだろう手を差し出す… 「はい…繋いで行こ?」 「あ、はい」 …特に何も感じないんだろうか… 目が悪いせいもあるけど、 最近半分…ほとんど見えないのもあるけど… 声で感じた印象では、 それほど楽しんでくれてる感じしないな… 奥まで歩いていく途中にあった扉をそっと開いて、 急に莉桜ちゃんを部屋に引っ張り込んで抱きしめた ーーー……… なんで、何も言ってくれないんだろ… そんな好きじゃないんじゃないかな… そんなことを考えながら、 そのまま喋り出した、 「俺さ、なんか、この間のメッセージ…酷い言い方…したよね…? ごめんね。 あ!絢世来た!!!… よし、驚かすか! あ …呼び捨てにしちゃった…」 抱きしめた後、絢世を見つけてすぐに突き放した… 暫く黙って俺を見つめていたので、 そのまま続けて喋べろうとしたが 「あ、えっと……/// はい、全然、大丈夫で、すよ??」 急に声が上がっていたので、 あぁ、そういう反応させるのは悪くないな、 と思っていた… 話を変えようと 「絢世、優しいよな…」と他人の話に切り替えてみると、 「とっても優しいですよ! この前お見合い回避したいからって、先輩のお父さんに恋人役で挨拶したりしましたけど…」 普通に話し始めた。 何か、言いたいこと…ねぇのかな… 「………優しすぎんのかなぁ…… ……つか、全然こっちこないじゃん…… ……?なにみてんだ…絢世は… お父さん厳しいとかなのかな… …ちょっと気になった。 まぁ、ケンコー生徒ってそういうやつ多そうだよな。 いや、それは流石に見た目で判断し過ぎか。 ん?莉桜ちゃん緊張してんの? じゃあ一緒に飴食べよっか… めっちゃ大きいやつだよ♡ 可愛いでしょ? って、暗くて全然見えねぇな…」 「お医者様でした! わぁ〜めちゃくちゃ大きい飴ですね…… あ、なんか道逸れたっぽい人達が…」 不意に人のいるところへ出ようとするので 手を取る。 「あ、まって、行かないで? …今日さ、脅かすっての結構口実で、 莉桜ちゃんに会いたかったんだよね。 好きって言ってくれたじゃんって話の後… メッセージで困らせた気がして… 俺さ、最近わかんなくて。 女の子との付き合い方? って変な話なんだけど。 みんなに近すぎんのね、多分… だから、嫌だなって思ったら言って欲しいし… 逃げていいからね? 俺は莉桜ちゃんが付き合いたいなぁとか、 彼女にして欲しいなって本気になることがあったらさ、 またその時、 俺もちゃんとした気持ちで向き合いたいな… なんて思うんだけど…どうかな?? なんていうんだろ、 遠慮されてる?みたいな感じだったから、 先輩だからーとか、そういうの抜きでさ。 莉桜ちゃんがどうしたいかまた、 答えが見つかった時に俺も考えたいっていうの? …その前に他の女子から告白されたら気持ち揺らぐとかあんのかもだけど、 特に今のとこは無いし。」 用は試してみようってこと、 伝わってんのかな…これ… こうやって見なきゃ、 俺は俺の気持ちもよくわからないから… 割と真面目に言ったつもりだった、 嫌だなって女もいるだろうけど… 莉桜ちゃんは、 俺の方に向き直り、 両手を取って俺の方を向きなおした。 「私の方こそ、 何も考えずに自分の気持ちだけ伝えて、 春輝先輩に迷惑じゃなかったかなとか、 考えてました。 恋とか、男の人との付き合いとか、 お兄ちゃんと友だちが当たり前にしてる事なのに 全然わかんなくて… 台本の中では泣いたり恋したり怒ったり 出来るのに、 台本がない莉桜って役が1番嘘っぽくて、 そんな莉桜といて楽しいのかなって… 千雪先輩とか、レイカ先輩とかのほうが、 やっぱりかっこいいし…… 莉桜には、なんにもないし、 春輝先輩が笑ってられる人と、一緒になって…… 欲しいなって…思って、ます…… 春輝先輩のかっこいい所も、 かっこよくない所も、全部、好きです………… なんで莉桜、1年生なんだろうって、 あと1年早かったら、 同じクラスでもっとつりあえるような、 素敵な人になれてたのかなって… …………入学してすぐの時とか、 文化祭の時とか、 全然成長できてないし、 弱いし…練習の時も、 閉じ込められたり、 イジワルされてた時も、 笑ってる事しか出来なかったし… 背中を押してくれたから… お姉ちゃんとも本音で話せたし… 春輝先輩に、全然ふさわしくないですよ……?」 …あ…れ… …? 静かに話を聞いていたけど… ちゃんと“好き”を伝えようとしてる? ……、わからないんじゃ…なかったっけ…… …… 一緒に探そうかって話しだったけど、 …これって   …? だんだんと涙声になり俯かれ、 どうしたらいのか悩んだ… こんな風に泣かせんのは…違うんだよなぁ… 「自信ないんだな… そんな弱くちゃ駄目じゃん? 俺明るくて前向きな莉桜ちゃんが …好きだよ? うん、わかった、わかった。 泣かないの。」 どうしたらいいんだろ? とりあえず、ぎゅっと抱きしめてやる。 「すみません… ちょっとだけ、すぐ泣きやみます……」 暫く俺の腕の中で声を殺しながら泣いていた。 ……苦しめてんな…… ………… 「ちょっとじゃなくていいよ、 莉桜ちゃんいつも頑張りすぎ。 俺の前では泣いていいよ。」 きっと普段泣いたりとか、 あんまりできないんだろうな… まぁ、 人間みんな、映画や漫画を見て泣いたりはよくするかもしれないけどさ… 誰かの前で悔しくて泣くのってあんまりないよな… …… 千雪やレイカの話を出されたが、 どうなんだろうか… 2人のことを考えてみる… 同じ…じゃん…? …何処に違いがあんだろ… 見た目や性格の話じゃない、 好きとか嫌いの話… 莉桜ちゃんとふと比べてみたが… 別に… 嘘もつく事あるし… そうじゃないときもあるし… 誰かが1番なんて…無いんだよな… ただ、相手に合わせてるだけなんだけどな… ふと、頭撫でてやると… ちょっと落ち着いたのか莉桜ちゃんは喋り出した… 「……春輝先輩、好きです…… 春輝先輩の良くない噂も、 お家のこともたくさん同級生とか 先輩達から言われました… でも本当でも嘘でもどっちでもいい、 本当だったとしても関係ないです。 春輝先輩は春輝先輩だから、 学校が辛いなら行かなくていい、 自分の為に生きてください…… 春輝先輩自身が、 この人は弱い所も受け止めてもらえるって、 思える人が、いるんじゃないですか…?」 見上げられて目が合うと、 苦しくなった。 ………居たら、良かったよね。 そんな風に言ってしまいたくなるのを堪える。 「いないよ、 俺にはさ…誰もいない。 弱音とか吐けるような… 本音で話したこと、 ないの。 俺は、きっとね… 悪いやつだと思うよ。 こうやってすぐ女の子泣かせちゃうから……」 指で莉桜ちゃんの涙を拭ぐってやる。 せっかくの化粧台無しだな… 千雪かよ…あぁ、レイカもそうだったっけ? …… 「俺ね…………、 お母さんに似ててさ…、 生まれた時に疾患があったんだ。 お母さんもおなじね。 …感知はしたけどさ… …右目が殆ど… 今は見えてない。 だから、さっき… 手繋いで欲しくて手を伸ばしたの。 …怖いんだ。 見えなくなっちゃうのが。 …片目は不自由だから。 俺は目が見えなかったら死んだのも同じだろうし… 絵をね、 昔から描くのが好きだからさ… 喧嘩も学校も嫌いじゃないけど… 死ぬ前にね、必死に足掻きすぎて… 今は手一杯な訳… 自分で自分の首を絞めてるみたいなさ… でも、生きてる。 今俺ね、生きてるなって感じるの。 …確かに、千雪の事は好きかなって思ったけど… それは多分さ心の奥まで… 動くような気持ちの好きじゃなかったよ……、 ……わかんないけど。 千雪がどんな風に思うのか、 俺に対して言ってくるのかさ、 わかんないから… これからはあるかもしんないけど… 今はもう、 気持ちが離れてるかな。 それに比べたら、莉桜ちゃん俺にこうやって話してくれるじゃん? 気持ちで千雪に負けないくらい言葉くれてるじゃん。 …俺、そういう方が好きだよ。 その方が心が動かされるから。 可愛いとか、可愛くないとか、 見た目を気にするならさ…努力してもいいし、 まだ高1じゃん? これからだよ。 まぁー…そうだねぇ〜…… 見た目の話をされちゃうと、 Dカップが好きとかはあるよ? でも、俺は… それだけで付き合う人を決めたくないかなって 思うな…」 これは全部本音だった。 別に誰がどうこうしようが俺には、 どうでもよかった… 付き合う事が全てとも思ってないし… …… …それは多分、もう“恋”とか“愛”とか、  そういうことを感じる心が死んでるんだってこと… 「そう、だったんですね… 全然、わかりませんでした。」 恐る恐る手を伸ばして右頬に触れてくる。 ちょっとは、自分から触れてくるようになったな… 「たくさん頑張ったんですね…多分これからも… あれこれ考えるよりも言葉と行動にした方がいいってママに言われてきたので、 今春輝先輩が何も飾らずに話してくれてるので貫いてきてよかったなと思います! だから莉桜は好きをたくさん伝えて生きます! だからその……誰にも言わないから、 莉桜の前では、弱い所、見せてほしいです… その首の手、 緩めてこうやって莉桜に回してください! そしたら、 春輝先輩優しいから莉桜の事絞められないでしょ? お化粧もこれから覚えますし… む、胸はまだおっきくなります!多分! 春輝先輩の右目に、なんて 烏滸がましい事は言わないので、 せめて手を緩めて休む場所にしてください。」 自分の手を莉桜ちゃんの首元に当てられた、 あぁ、これは…まずいな… “優しいから絞められない” それを演じなきゃいけない苦しさに思わず手を出そうかとしてしまう自分が居て、 そっと手を首から離す… 莉桜ちゃんが“優しい俺で居てほしい”と思うならそれで終わらせるけど… 絞めちゃうよ… 本気で… 「そうだね、俺はずっと止まらないよ… そうしなければ、 死んでるようなものだって思ってるから… …… 莉桜ちゃん、ありがとね。」 そっと屈んで頬に優しくキスをしてあげた。 「俺今すごい幸せだよ。」 顔を真っ赤にしてんのは、反応を見たらわかった… …ごめんね、ずるいことしてんね… …俺が伸ばしてしまいそうな手を隠して、 …ワザと優しくして誤魔化した。 「春輝先輩のそんなふにゃふにゃした声、 初めて聞きました………可愛い」 ………だろうな…“優しい俺が好き”なんだもんな…… 「弱いこと見せるのは、どうかなぁ〜… 男として情けないけど、 莉桜ちゃんの泣き顔見てたら釣られちゃうかもね。 ただ、優しいは勘違いかな… 俺凄い重い人間だからさ。 本当はこんな話しかたでもないんだよね。 ……めちゃくちゃ強引な人間だから、 優しくしてるのは嘘かもよ? 可愛いかなぁ? でも、甘えたい時? こんな感じになんない?」 …ちゃんと本当のことも言っておく、 …そうじゃなかったら、いつかきっと、 莉桜ちゃんは恋をすることさえ 怖くなってしまうだろうから… 「春輝先輩に振り回されるなら、幸せです! だって莉桜、全部初めてなんで! 嘘か本当かもわからないし…」 …そう…なんだ……、じゃあ…いいのかな… 「……なんか、すっごい旧校舎静かじゃん… そろそろ、行かなきゃな…… 違う意味でなんか、ドキドキしたかも。」 立ち上がって莉桜ちゃんの頭を撫でて、 ずっと気になっていたことを口にしてあげる。 「血糊とメイクと涙でぐしゃぐしゃだね?顔めちゃくちゃ可愛いよ?」 ポケットから鏡を取り出しライトを当てながら、 ハンカチと鏡を無理矢理渡した。 「使って」 「…………わ!その可愛いは嘘だってさすがにわかりますよ!! あ、えっと!あっちの方は騒がしいですね! その、何かあったのかな、 私、そのえーと、ちょっと見てきましょうか???!」 「俺はいいや…いかない。 絢世によろしく伝えてね? …学校絶対戻ってくるから… 待ってて、戻ったらさ… たくさんいろんなこと、 また一緒にしようね?」 「…もし変な人いたらこっちのままの方が怖くて逃げ出しちゃうかもしれないですし大丈夫です! 帰り道は流石にダメだと思うので、 旧校舎から、出る時に使わせてもらいます… 気をつけて帰ってくださいね!」 「ありがとう。 ……またね、おやすみ……」      その後… 俺は、自殺未遂をした 毒を飲んで死のうとした… 生まれ変わって、 もっと違う人間になってたら… 誰とでも、 もっと何か… 良い恋愛が出来たんだろうか… …してみたかったな… 俺の心が揺さぶられるような… 衝撃的な… 恋がして見たかったよ… ーーー さようなら 。 目が覚めて、最初に思ったのは、 絵が描きたいだった… でも、全く筆が進まない。 真っ黒に塗りつぶした板が何枚も増えていく… そこに何かを描く事は無かった… 死にたかったな… 死んじゃえば、 俺なんか死んじゃえば… もう誰も苦しめなくて済むんだろうな…… 全部、塗りつぶした… 急に昔描いた絵も黒く黒く塗りつぶした… いいや… 全部、やりなおそう … 消しちゃおう… Twitterを開くと、 普段と変わらない皆の日常があった。 誰でもいいや、 会いたいな… いつもみたいに、話しかけてみるか… … “莉桜ちゃん、おはよ〜! 冬休みってなんか予定ある? この間遊びに行ったところ楽しかったから一緒に行かない? 旅館とか夜暗くて肝試しみたいだから好きかなって思って。 返事いつでもいいから、 待ってんね” “冬休みは特にないです!! 部活も休みなのでいつでも大丈夫ですよ〜” “本当?!…俺も今の所は特に予定無いんだよなぁ、他に誘いたい人いる?2人でもいいけど” “2人がいいです…” “いいよ、2人で行こうか! …予定良さそうな日、また明日にでも連絡すんね” “やった〜! 楽しみにしてます!!” “明日、学校で旅行の日程話し合いしよう? あ、というか放課後ってもしかして演劇部の練習?” “部活は今自由参加なので大丈夫ですよ!!” “これ歌ってよ、うまく弾けないかもしれないけど… この間呟いてたでしょ? なんかいいなぁって思って友達に譜面作ってもらってたから。” “いいですよ” “ありがと、じゃあ明日ね〜”     友達に譜面は嘘だった… もともと子供が好きで友達の妹を迎えにいくついでに幼稚園で莉桜ちゃんがTwitterに呟いていた edda“半魚人”の曲を流すと子供達が弾いてくれと言うので少し練習していたのもある。 多少しか、弾けないんだけど… 子供の喜ぶ顔は凄く癒される… …歌は口実、 …なんだろう、なんかしてないと… …死にそうだった。 … 柔らかい日差し、 ぼんやりと眺める外、 世界は何も変わらずに流れていた… 久しぶりにあったみんなの顔、声、 全部… ……何も感じなかったな…… …なんか、しないとな… …大事な事、忘れてる気がすんな… 「久しぶり、ですね…元気そうでよかったです!」 音楽室に現れた眩しい少女… あぁ、莉桜ちゃんか… 「莉桜ちゃん、お疲れ様〜…リプありがとね 俺あんまり学校来てないから、 みんな久々って感じだった。 どう最近は楽しい?」 「楽しいですよ! 夏の大会で見に来てた劇団の方に声かけてもらって、今は部活と土日は劇団の練習に混ぜてもらってます…」 「そうなんだ、いいねぇ… 一年生も後4ヶ月くらいしかないもんなぁ…次後輩入ってきたら先輩だね〜 …莉桜ちゃんなら、いい先輩になれそうじゃん! あっという間に俺は卒業してそうだなぁ〜」 卒業すんのかな…? 学校、もうよくねぇか? ……? …ここに俺のやりたい事、無いよな… 強く求められている場所が他にある、      まだ気持ちが乗ってこないが…… …多分、 いくべきは、その道なんだろうなぁ … … 「………よーし、じゃあ歌ってもらおうかなぁ〜… 何となく練習したんだけど、本当、たまに幼稚園で弾かせてもらってるくらいだから対して上手く無いからね?」   「私の方こそ、歌はとても音痴ですよ!!」 「そうなの?… でも演劇の時すごい声出るじゃん?… まぁ、いっか…じゃあ…演奏、 始める前になんだけど…」 …壊したいなぁ… 急に莉桜ちゃんに近づいて顔を除き込んだ… 「…半魚人って、莉桜ちゃんの気持ちだったりする?」 「え!?いやあの…そんな事は、 あるかもしれないです……ち、近いです…」 「ふーん…あるかもしれないねぇ…〜♡?」 ……いつもより穏やかな声を無理やり作って笑いながら半目で見つめた… 「…そうなのかと思ったんだけどなぁ。」 …壊したい… 「今は私何がしたいとか特になくて、 演劇くらいしか集中出来ないし、 とりあえずぐちゃぐちゃ考えたりしないように… 春輝先輩の事とか…考えちゃうと、 私らしくなくなっちゃうというか…… 春輝先輩と、レイカ先輩が旅行してたのも、 楽しそうでよかったって思うのに なんかモヤモヤしちゃったりとかして… 春輝先輩が幸せならそれでいいとか 言いながらワガママですよね… 忘れてください!! ほ、ほら春輝先輩のピアノ、 ピアノ演奏聴きたいです」 求めてよ… なんで? …俺のこと…嫌いになったのかな… …… 「そーいうのもっと言ってもいいのに? 俺は好きだなぁ… そう言ってくれるの嬉しいよ… たくさん遊びたいってことかな…?? じゃあ俺に歌って。 俺のために歌ってよ。 …ちゃんと届くように歌って… そしたら連れ出すから… 手、とって。」 …手を伸ばすと、そっと手を置いてくれた、 … 「…私は、春輝先輩といる時は春輝先輩の為にしか行動しませんよ。」 ぐっと引っ張って強く抱きしめ、 体温を感じながら、 一度冷静になってみた… …あぁ、早く、突き放さないとな… 壊しちゃうから… 早くさ、何とかしろよ… 「なんか、ごめんな。 中途半端な態度に見えてる? …ちゃんと考えてるからさ… 不安にさせてるんだよな…? 俺ね、凄く嬉しいの。 ちゃんと莉桜ちゃんのこと考えてるよ。」 嘘ばっかだな… 考えてる? …考えてない、 もう誰のことも今、考えてらんない… ただ、誰かそばにいてくれたら、いいのにって… それだけだった… 抱きしめたままそっと頭を撫でながら、 「…もっと、いろいろ話したいんだ〜… 莉桜ちゃんのこと、まだまだ知らないからさ。 って言っても俺のことも知って欲しいというか…」 ーーーーーー止めろよ!!!! 自分の声が頭の中で響くような感じがした… そっと離れてピアノに向かう… ……この曲、どっちなんだろうな…… 俺は多分、俺を連れ出して欲しいから、 この曲を選んだんだろうな。 「バラード風になっちゃいそうだけど… 上手く合わせるね? ………歌えそう?」 突き放した後も顔を真っ赤にして口をパクパクしていた… そんな風になるの莉桜ちゃんくらいなんじゃない? 「〜〜〜〜!!!! ぜっっっっっったいわざとですよね?! 私が春輝先輩好きなのわかっててやってるのずるいですよ!! う、歌いますよ! ……1分だけ待ってください…」 待ってるの苦手なんだけどなぁと、 そっぽ向いた莉桜ちゃんの背中を見つめた。 …あぁ、壊したい… そんな気持ちを押し殺しながら目を閉じた。 「そういうイタズラ好きな所も好きですよ…………」 小さい声でちょっと悔しそうな声が聞こえてきた。   「…うん、待ってるから準備できたら教えて〜〜?」 ただそれだけ言ってゆっくりと待ってる間適当にピアノに触って音を出していた… 半魚人の出だしの歌詞の部分のメロディーを触る… 「…傍にいて〜…… てか、 ……傍に居るだけでいいの?」 「傍に、いて欲しいです」 ~♪ 歌に合わせて静かに伴奏を合わせると、 うまく莉桜ちゃんは続けてくれた… 穏やかな時間だけが、ゆっくり流れていた… … 「……、全然歌えてるじゃん? ちょっと震えてたような気はしたけど緊張しちゃったかな? 良い感じだったよ… ね、横座って?」 ピアノの黒椅子を半分だけ座って隣に来る様に促すが、中々来ようとしない。 さっきの意地悪のせいかな… 「あ、ありがとうございます!! 誰かの為に歌うってすごく緊張しますね…」 おそるおそる空けられた椅子の端っこの方に腰掛けてくる… 「どうしました?」 「えっと…まぁ、 話したいことは山ほどあるんだけど〜… とりあえず旅行は寒いから電車で行こうってのがひとつね… 場所的に雪降りそうだし。 年内が良いか、 明けましてで行くのかも悩んでんだけど… 予定とか全く無い?? 家族と過ごしたりもするよね?」 「冬休みはお姉ちゃんと初詣に行くくらいです… 年初めの方がいいです!」 「うーん、2と3辺りだと早すぎ?…学校いつからか忘れたけど…4と5辺りの1月が良い感じかな? 山奥って感じだし、冷えるけど… めちゃくちゃ楽しいとこだから防寒だけしっかり持ってきて欲しいんだけど… まぁ、荷物嵩張るようなら先に宿に発送してもいいし。 あんまり防寒具なければ、 俺の使っていいよ? それとも、俺を使う?♡」 手を広げて抱きしめる手前でふわふわと揺れてみるが、首を振られた。 「人少なさそうなので2か3くらいにいきますか? 防寒具持っていきます!!!」 慌てて椅子から立ち上がってるのをみて笑った。 「はーい、わかったよ。 そんな露骨に避けなくても… あ!ねぇ、ご飯食べに行かない?友達がやり始めた店なんだけどおしゃれだし美味いんだよ奢るから来てきて 俺帰っても1人飯になっちゃうから、誰かと一緒にご飯行けるの有難いんだよね〜ーーー」 ……避けられる事が1番キツいんだけど、 …ま、知らないし仕方ないよね… 「春輝先輩すぐイタズラしてくるんですもん… はい! 私も、もっと春輝先輩と一緒にいたいので行きたいです!」 ……なんだろう、足りないなぁ… 「うーん、 莉桜ちゃんみたいな子よりも、 もっとぐいぐいくる女の子の方が周りに多いから、ついね…悪戯してみたくなるというか… …嫌じゃなさそうだし〜?♡ って言うか、 嫌だったら言って欲しいんだよね…これでもかなり優しくしてる方だと思うなぁ。」 椅子から立ちあがり伸びをしながら窓を開けた。 夕焼けだ… 「俺結構、酷いやつだから。」 夕焼けの光で表情はあまり見えないだろうな、 凄い最低な事思ってんだけど… もうそろそろ…やめとこうかな…… やめたくないなぁ… 「さ、行こうか…」 窓を閉めて歩き出そうとすると、 莉桜ちゃんが口を開いた。 「春輝先輩は優しいですよ? ちょっとだけ、不器用なんですよきっと… 行きましょう」 俺の左側に立って手を繋いでくる… 不器用? …… 繋がれた手を引っ張って後ろから抱きしめ、 この衝動を抑え込んだ… 「そーでもないって… ただ…さ、失敗ばっかで疲れてんだよね…… 不器用かぁ… ちょっとごめんね〜…」 肩におでこ乗せたまま俯く、 止めてあげないと、解放しないと… このままじゃ、… 千雪より取り返しがつかなくなんじゃかいかな… 音楽室で静かに時計の音だけ響いた …… 「つかさ??…莉桜ちゃんって俺に不器用とか言っちゃうんだ〜? どの辺りが不器用に見えるの?」 急に正面側に屈みながら顔を覗き込んでみる。 「…!! な、なんか…その、春輝先輩の底がわからないって言うか… 見せてくれるのかと思って近づいてくれたのかと思ったら目の前で隠されてる感じがして、 寂しがりなのに、1人で耐えてるような… 誰にも見られたくないとも思ってるような… 難しいですけどそんな感じです… 違ってたらごめんなさい。 ……先生来たら春輝先輩学校来てるのバレちゃいますよ?早く行きましょ」 …うん、耐えてる… …でも寂しいじゃないよ、これ… 違うんだよね……… 「底なんかないんだけどなぁ。 まぁ、そう見えるのか… 案外何も考えてない時もあったりするんだけど雰囲気なのかなぁ〜…? 自分で言うのもだけど、 すげぇ寂しがりだよ? …女の子とか好きだけど… 嫌われたら嫌だからさぁ… 昔はずっと強引にしてたけど、 怖がる子も居たし。 でも本来、めちゃくちゃ束縛とか酷いわけ… だから、自分で自分をおすすめは正直出来ないんだよねぇ… 結局付き合ったり、恋人になったら駄目でしたみたいなさ。 そーいうの嫌だから、 そっから踏み出してないだけ… だから、自信持てるように… なんて莉桜ちゃんに言ったけど俺自身が足りてない所なんだよね… 最近は吹っ切れたんだけど。」 半分本気の話だ、 恋愛について決定的に自分に対しての自信がない。 ねぇ、好きって何なの…? … 何で、俺なんだよ…… 「…じゃあ、行きますか。 美味しいもの食べに…」 「私が春輝先輩の事オススメしますよ!!あっ…待ってください〜」 おすすめってなんだ? …そんなことを思いながら前を歩いた… どうにか、ならないかな…この感情… …… 旅行当日が来るまで何度か悩んでいた… ……やめたほうがいいんじゃないか…… これ以上、踏み込むと… もっと深く傷をつけるだろうな… …何でダメなんだ? …行けるとこまで行って傷をつけちゃダメなのか? ……なんか恨みでもあんのかよ…… …ないね… …無いのに… ………幸せな顔されると、苦しいんだよ。 あっという間に年を越え旅行当日が来た… … “莉桜ちゃん、起きてるかな? 寝てたら全然… まだ電車の時間までには後数時間あるし。 今日電車のって行くんだけど途中まではバイク乗って行くから、あと少ししたら迎えに行く。 準備しといてね?” メッセージをして、 時間通りに待ち合わせ場所に着くと既に 莉桜ちゃんが居た。 「おはようございます!!! 今日はお願いします」 「おはよ、ちゃんと寝れたー? そんなクマとか無さそうだから平気かな? じゃ、行きますかぁ。 電車長旅になるし、 お腹空いたら途中下車とか全然するから言ってね」 「はい!!ちゃんとぐっすり寝ました! お友だちと旅行初めてなのですっごくたのしみです!!」 はじめて??って今言ったよな…? 「え??…マジで? 旅行とか…いかねぇ?? この年齢じゃ…ないか… でもあれじゃないの?? …友達+家族とか旅行行ったりしないんだ?? …はじめてもらっちゃって、 ごめんな、その分楽しもうか」 「初めてです!!! 私、実は小学生のときの記憶なくて… してたかもしれないんですけどわからないんです」 …え?ちょっとまって…記憶喪失…? だからなんか天然な感じだったのか… ………何となく普段の莉桜ちゃんを見ていて理解ができた… 「そうなのか… 記憶…ショックとかあったのかな… 無理に思い出したらしんどいだろうし、 これから楽しい思い出増やせばいいか。 今日泊まりに行くとこ、 そこそこ温泉ついてたり、 部屋でのんびり出来るけど… ゆっくりしたい? それともどっか遊び行きたい? 2日目は迷路に遊びに行きたいなぁとは思ってんだけど。 今日実はノープランなんだぁ。 莉桜ちゃんに、 合わせてみたくて。」   ……合わせて見たいって言うのも、 これが最後だって自分に言い聞かせたいからだった。 「迷路!大好きです!! うーん、遊びに行きたいです! 全部任せきりでごめんなさい」 「OK! 迷路楽しいよね、 国内ではかなり難し目な迷路らしいよ?? 頑張ろう〜…… 競争してもいいけど、 俺背が高いからさぁ、 ずる出来ちゃうんだよね♡ 上からなんとなく見えちゃう時あって。 面倒くさくなると平気でそーいう悪いことしちゃうから。 いいよ。 じゃあ、宿ついた後に遊びに行こう〜? そうだなぁ、近くにあるのはテーマパーク? 時代劇みたいな雰囲気好きなら好きかも。 お化け屋敷みたいなのもあるし! どう? ついでに、変装とかできるし、 時代劇ごっこできるよ。」 「時代劇ごっこいいですね! 春輝先輩が和服… 絶対似合う!! 私も春輝先輩も演技経験者だから撮影だと思われるくらいやりましょ!」 「俺、 殿様でもやろうかなぁ 莉桜ちゃんは何役がいいかね… あれ、殿じゃ絡みづらいのか? コイツらなんか気合い入ってんなぁって周りからわれそうじゃん。 あ、芝居が見れたりもするし! 見ようよ!」 「ふざけた事も本気でやるとたのしいですよ! お芝居みたいです!! …そう…だね、 なんかね…俺自身こうやってやってきた事…いつかきっと振り返る時が来るんだろうけどさ… “莉桜ちゃんとは、 楽しかったって記憶だけ残したいなぁ。” あ、じゃあ町娘の役やってよ。 殿で城に連れ去るから。」 きっと何人もの女子と離れようとしてる… この埋まらない気持ちもだが、 自分の状況も最近変わりつつあること。  楽しかった記憶だけ残したい ーーーー ……どうするべき、なんだろうな…… もうなんか、 自分の事も気持ちも纏まってない… 全てが“適当”になってるような気がすんだよな… 「思い出、今日からたくさん作っていきましょ? …演技じゃなくて連れ去ってくれても大丈夫ですよ、なんて…」 期待してくれてんだな… 「そーだなぁ…じゃあちょっと手、広げて?」 「?はい」 ちゃんと手を広げて構えている。 「はは…ウケる♬」 ぐいっと両手でで抱き上げて高い高いしてみる。 「俺を見下ろす気分は〜?笑 このまま抱っこしながら電車乗り込んだらびっくりされるかな?」 「きゃあ!!何するんですか?! お、下ろしてください… みんなびっくりしちゃいますから!!は、早く行きましょ!!おーろーしーてー」 「いーよ?」 地面にゆっくり下ろす…もう最後だから …これくらい振り回してもいいよね。 「なんかね〜、莉桜ちゃんって、こう、 遠慮??してんなぁみたいなイメージだったから、 ショック受けたらそーいうの消えないかなぁって思って… じゃ、行こっか♡」 楽しげに電車に乗り込んだ… 夕方まで遊んで夜は宿へ …割と1日遊び尽くした… …普通に楽しく遊んでたな… …そう、このままでもいいんだろうけどなぁ… 部屋に入ってすぐさま腰を下ろした。 「ふぅ、今日結構騒いだなぁ〜… 結局あんまり時間なくて全部回りきれてないから、 また遊び行きたいなぁ〜… あ、なんかね、ここの風呂って24時間入れて個室なんだよ? 鍵あるから、はい…行っておいで〜 莉桜ちゃんの後、交代で行くからさ… 露天だから湯冷めしないようにね? それとも一緒に入りたい?」 鍵を差し出して悪戯っぽく笑う。 「一緒に?!い、いえ先いただきます!!」 鍵奪い取って走り去る莉桜ちゃんを見て、 1人部屋に取り残され雪景色を眺めた… 「そんな焦らなくてもなぁ。 まぁ、いっか…」 …… 普通は、そうだよな… やることヤってる女だったら 平気で一緒に風呂入ろうって言ってくる… …そういうの、もう感覚がめちゃくちゃだった… ……やめないとなぁ…… 数分後… 「...... ただいまです… 先はいらせてくれてありがとうございます… お次どうぞ!」 髪を後ろで縛っていた。 旅館に置いてた浴衣に着替えている… なんか言って欲しいのかな… それにしても、帰ってくんの早く無い? …遠慮しちゃったか… 先に行かせるの良く無かったかもな… 「おかえり〜♬…じゃあ、行ってくるね、 戻ってきたらご飯行こう。 バイキングみたいな感じだし好きなだけ食べようね♡」 … 「はぁ」 湯船に浸かりながら、 雪を触る。 …雪か… 結局俺は何がしたかったんだろうな… ……必死だったけどさ、 どうせ俺じゃ無いやつと みんな幸せになんだよ… ……知ってる。 “俺じゃ無い” 俺はいつも選ばれない。 家族からも、 友達からも、 選ばれないのが俺なんだよ ーーー だから、選ばなくていいんだよ。 俺は、どうせもうすぐ死ぬんだろうから。 誰も幸せになんか出来ない。 俺といたら、幸せに出来ないんだよ。 だから、今だけあればいい。 長湯したかな… 風呂場に見慣れないポーチがある… 俺の前に居たのは莉桜ちゃんだし… 慌ててたんだろうな… ……先輩後輩だとまぁ、 こうなるのは仕方ないよな。 風呂から戻ると莉桜ちゃんは、 うとうとしていたのか、 俺を見て慌てる素振りをした。 …気、つかいすぎ… 「ふぁ〜…いい湯だったなぁ… ね、このポーチ莉桜ちゃんの? 風呂場に置いてあったよ? 違ったかなぁ? …とりあえず、お腹空いたしご飯行こう〜旅館の中、広いから探検もしたいし♡」 「あ!私のです!ありがとうございます ご飯、行きましょ行きましょ!! 春輝、なんか色っぽいですね ドキドキしちゃいます」 …本当か?…ドキドキしてんのかな? 「ご飯ここの、 めちゃくちゃ美味いからね肉食べよ肉。 色っぽいかぁ…サングラスが無いから?? …じゃあ、もっとドキドキしてみる♡」 ちょっとしゃがんで近づいて莉桜ちゃんの手で自分の頬を触らせてみた。 「ね、いいよ俺に触れても。 怖がらないでよ。」 「怖がってないですよ?」 そのまま俺の首に手を回して抱きつき耳元で 「す、好きな人と旅行に来てずっと心臓破裂するんじゃないかってくらい緊張してるんです。」 さっと離れて顔を隠しながら先にズカズカと歩き出した… そんな様子を見て後ろからついていく… …羨ましいよ…好きってなんなの? 「ここなんですよね?早く入りましょ…」 「…そっか、じゃ後で破裂させてみよっかなぁ…♡」 嬉しげに頭を撫でると顔を真っ赤にしている。 ………わかんないな…… …旅館のバイキングは豪華で茶碗蒸しとか和食とか牛ステーキやら焼き魚、ご飯にパンにパスタにうどんとかデザートもたくさんあり2人でおかわりばかりしていた… 「ふぅ、食べたなぁ… じゃあ食後の運動に館内散歩しようぜ、 ライトアップされてるけど全体的におどろおどろしくて可愛いの♡ 俺さぁ、妖怪とかにあってみたいんだよなぁ… この世のものじゃ無いなにかと友達になりたいし、 もし綺麗な女の人いたら俺のものにしたいよね。 私綺麗?って聞いてきたら、 綺麗だよ… 君の顔は世界一綺麗だから俺のものになれよ♡ って手懐けたいなぁ♡ 莉桜ちゃんは、お化けにあったらどうする?」 …凄い嘘つきだな…幽霊にはなりたいけど… … 「おなかいっぱいです〜 妖怪!!ネチョネチョしてないのだったら…カッパとかは握手する時ちょっとビックリしちゃいそう… ……やっぱり春輝先輩は綺麗なお姉さんの方が好きですか? お化けにあったら…… 基本的にスルーしちゃいます笑 呪われたりしたら怖いので笑 相手から話しかけられたら答えちゃうかもですね…」 意外な言葉が帰ってきて、 廊下を歩きながら笑ってしまった。 「ネチョネチョ!? 水辺の妖怪は好きじゃ無い感じか… かっぱとか、きゅうりもっとけば仲間になってくれそうじゃない?? …うーん、綺麗じゃなくても女の子が好きだね。 ついつい甘やかしちゃうというか… 守りたくなると言うか… 今のところさ、 誰が1番みたいな優劣が付かないくらいにはチャラいって言われても仕方ないけど女の子が好き。 平気で、女の子となら何でもしてるんだよ? 莉桜ちゃんは、軽蔑しない? そーいう俺だとしても。 そっか… 俺がもし、お化けになったらスルーしちゃう?? 呪われるリスクがあったら逃げちゃう?」 軽蔑してくれよ、 突き放してくれれば手放しやすいんだけどなぁ… 「うーん、春輝先輩は春輝先輩だから… 彼女がいるならダメですけど、 そんなことで嫌いにならないですよ? 春輝先輩好みの女の子ってどんなのかな〜って、 好きな人の好きなタイプは知っておきたいです!! 春輝先輩ならお化けでも大歓迎です!!!!!!!」 「好きなタイプねぇ… 見た目の方?中身の方?」 「どっちも!」 「強いて言えば、 俺を理解してくれる子かな。 見た目は普段から自分に気を遣ってるとか?? 理想はDカップなんていってたけどーーー… 1番は俺にだけでもいいから本心とかちゃんと心開いて向き合ってくれる子だね。 知りたいから、 全部知りたいんだよね。 俺欲張りだからさぁ… 何でも素直に話してくれる子がいいかなぁ。 遠回しにされたり、 逃げられたら、 誰でも嫌じゃん? …俺ね、莉桜ちゃんがお化けになったら、 事情を聞いて必要ならきっと俺も一緒にお化けになるよって言っちゃうタイプだと思う。 リスクとかより、 必要としてくれる方をとるからなぁ… …だからね、 俺、シキコー行くのやめようと思う。 俺を必要としてくれるやつの力になりたいから。 あんまり会えなくなるかもだし…… 話したいこと、今のうちに話しておくよ。」 …これが突き放すチャンスかもな… 「俺さ、 恋愛とか考えるのにあんまり向き合ってなかったし、 いろんなやつに聞いてみた。 …そしたらさ、 守りたくなる人とかって言われたけど… 俺は男女関係なくみんな守りたくなんの。 優劣がつかないわけでさ… それ以上に、 その人が大事だってなったり、 誰よりも大事になるなら、 好きなんじゃ無いかって言われた。 …… それで考えたけど、 俺は結局さ… 今は… 誰もそんなに強く求められる人が いない事に気付いちゃって… いつか気づいたりするのかもしれないけど。 … 平気でこーいうこと、 …出来ちゃうんだよ…?」 莉桜ちゃんを壁側に押しやって、 頬を撫で顎を上げ気味にして唇が触れる手前で止めてみた…キス…してやろうかな? 「知り合いとか、 話が合えば女の子に限らずだよ…? …なんか、虚しいよな。」 頬にキスをしてそっと離れながら 「ごめんね?突き放したいわけじゃ無いんだけど… …知ってて欲しいから。 良い人じゃ無いかもしれないっていうのをさ… 俺に縛られなくても良いんだ、 莉桜ちゃんか幸せになるなら。 それで俺は嬉しいから。 彼氏とか出来ても、 おめでとうって言ってやれるよ。 ……これ、全員同じなんだ。 女の子とかには、 よく言ってる話…」     ……突き放したいんだよ、 突き放したく無いわけじゃない… どうして言えないんだよ… 早く、突き放せよ… 「そうなんですね… 春輝先輩に縛られてるつもりはないですよ。 むしろ、春輝先輩を好きになれて幸せですよ? 会えなくなっても、 私は春輝先輩の事大好きです。 春輝先輩にとっては私も他の女の子と同じなんでしょうけど… 私は、その、 春輝先輩の特別になれた相手は 本当に幸せなんだろうなって思います。 私も、私じゃなくても春輝先輩が心から大切で 誰よりも離したくないって 思える人が見つかる事が私の幸せです。 その…私だったら、 とってもとっても嬉しかったんでしょうけどね 記憶が無いからこそなのかわからないですけど、 今目の前にいるその人が私の中での印象だから過去は関係ないですよ。 だから、春輝先輩は私によく 「いい人じゃないよ」 って言ってくれますけど 私にとって春輝先輩はとっても 優しくて寂しがり屋さんのヒーローですよ。 そんな春輝先輩だから、好きなんです。 むしろ初めてだらけの私なんて、 経験豊富な春輝先輩からしたら 赤ちゃんみたいなものでつまらないんじゃないかなって、 思っちゃいますよ?」 ……な  んで  ? 思わず首でも絞めてやりそうになる … 限界か? いや、耐えられる…… 耐えなきゃ駄目だろ… 思わず手が震えた… ぐっと右腕を左手で抑える… “苦しい” 「……莉桜ちゃんは優しいね。 …赤ちゃんだとは思ってないよ、 強がりで頑張り屋さんの後輩… ちょっと揶揄いたくなる可愛さがあるなってぐらいかな。 …特別かぁ… 特別に……なりたいの? じゃあ、 抱きしめたまま寝ても平気? 俺のこと好きなら一緒の布団で寝てくれる? …莉桜ちゃんは、 そーいう事は付き合ってないと出来ないって感じかな…? …… …男女の友情って、 …ありだと思う? 質問ばっかでごめんね、 教えて欲しいなぁ…」 精一杯笑った、 あぁ、これじゃ   … 華園千雪と全く同じような気持ちになっちまうよ… “いっそ俺を殺してくれればいいのに” 「春輝先輩が良ければ…」 「うーん、莉桜ちゃんは? ……平気なの?嫌じゃ無い? 俺、嫌なことはしたく無いよ?」 「私は嫌じゃないです!! 男女の友情…友だちとか恋人に性別って関係ないんじゃないですかね?」 「そっか、良かった…」 そっと廊下を歩きはじめながら体を引き寄せた。 「寒いからじゃあ、くっついててね。 莉桜ちゃんは、 そういう偏見とかは無い人? 同性愛とか。」 「春輝先輩暖かい… 偏見は全然ないですね〜春輝先輩は男女の友情はあると思います?」 「そう?…俺があったかいというよりは、くっついてると暖かくなるよ自然と… …俺はね、むしろ友情を大事にしたいかな… 女の子ってさ、 悩んだり何かに不得意だなって子が多くない? 男の方が有利みたいに見える時あるって言うか… 実際そうなのかもしんないけど。 見た目からして文化的にもそうみられんじゃん。 でも、 そういうのを、 補い合ったりするのは恋愛じゃなくても男女助け合っていけるもんなんじゃないかなって思ってる。 俺に出来ることがあるなら、 答えてあげたいし。」 寧ろそれだけが、俺の唯一の生きる糧みたいなものだから… 「やっぱり春輝先輩は優しいヒーローですね」 …は? 「え、なんで?!そうだったかな?? ヒーローとか意識したことないけど。 ……莉桜ちゃんは、俺にして欲しいことある?」 「うーん、春輝先輩の隣に居られるだけで嬉しいので…あ、じゃあ、呼び捨てされたいです。」 呼び捨て…か… 「………莉桜。」 じっと見つめて首を傾げると 「…えへへ、幸せです…」 ………、同じ、笑い方…するなよな……… 「ね、りおって2文字呼びがいい…呼びやすいから……駄目かな?」 「いいですよ!!」 「うん、じゃあ…そうするね… あ!探検終わっちゃったなぁ…」 「もう部屋戻る? 明日早いし…一緒に寝よっか♡」 「そうですね… もう他のお客さん達も寝てるでしょうし、  戻りましょうか… 明日もたくさん遊びましょう」   部屋に戻ってきて電気を消した… 全然来る気配がないんだよな… 「…よし、じゃあ、リオ?おいでこっち♡」 自分側の布団に手招きしてみる。 「一緒に寝れるよな? …それとも嫌だったらそっちで寝てくれていいけど。」 徐々に近づいて来る…ためらってんな… 「寝相悪かったらごめんなさい……」 「なんか、ペットみたいなんだけど。 呼び方のせいかな?」 「ええー」 …ぎゅっと抱き寄せてみる、 2文字呼び“ちゆ”と同じ使い方してんの、 莉桜ちゃん気づいてるかな… 「これなら動けないから、寝相悪くならないよな?」 「えへへ…春輝先輩、大好きです。」 あぁほらまた… 俺の傷を抉るのか… 嫌になるなぁ… その笑い方… 「ありがとう…ね、こっち向いてよ。」   「はい?」 「キス…してみる?」 「リオなら、いーよ? はじめてだったら御免だけど… 試してみる?」 そっと髪を撫でながら優しく笑って言う、 ほらまた同じことの繰り返しなんだよな… 全員同じ…… 「好きって言ってくれてありがとうね。 俺、そう言ってくれるだけで、 凄く嬉しいから。 何を返してあげたらいいかわからないんだけど… というか、だから?かな…」 … 「……してください、 私は、春輝先輩が笑ってくれるだけで幸せですよ。」   ぎゅっと眼を瞑られ、躊躇った… ……全員、かぶるんだよ…… …ホント、嫌になるなぁ… 「そっか、ありがとう……」 そっと抱き寄せて軽くキスをした。 俺でよければいくらでも… 「……おやすみ、いい夢見てね。」 嬉しそうに抱きしめたまま、眠った。 …ように見せかけた… 「春輝先輩?」 俺の頬に触れて来る…くすぐったいな… 「寝ちゃった…ふふ、可愛い… お肌赤ちゃんみたい… まつげ長いなぁ……大好きですよ…全部……」 抱きしめられている腕に触れるだけのキスをしてすやすやと眠りにつく莉桜ちゃんを、 そっと目を開けて見ていた… ごめんな…… 小さく呟いた声は珍しく震えていた。 …… 割とその後の事は、ふんわりとしか記憶にない… 旅行が終わった後にハヤト先輩と恋愛について話していて自分の気持ちを吐き出そうと、 送った文章がある… “莉桜ちゃんへ 旅行お疲れ様〜! あのさ… 詳しくは話せないけど、 俺ね、女の子と遊ぶことやめてみることにした。 俺が、 本当に莉桜ちゃんを好きだなって思ったら… 遊びたいって声かけるな… わがままばっかでごめん。 じゃあ、 元気で… 莉桜ちゃんは強い子だし、 いい子だから、 もっと幸せになれるし、 もっと… 前に進めるだろうから。 ずっと応援してるな。 今までたくさん、ありがとう。 あ、普通に先輩へのメッセージは書けたら送って!? 取りに行くし… そういう連絡は待ってるから。 じゃあ…また。” … シキコーの三年生の卒業式の朝方、 莉桜ちゃんのクラスの机の中に手紙を入れた… 遅くなっちゃったけど… これが俺の全てだから… …これで、伝わるだろうか… 輝田 莉桜 様、 “最初から最後までずっと嘘をついて騙してた” “きっとこれからも嘘しかつけない” “俺は誰とも恋愛ができないんだと思う” “たくさんくれた「好き」って言葉全部” “苦しかったよ” “気持ちには答えられない… だから” “楽しかった記憶だけ残しておいて欲しい” “どうか俺を忘れないで欲しい” “次に生まれ変わって俺が俺らしく恋愛に向き合えるようになったら” “一緒に考えてほしい” “教えてほしい” “好きって何なのか教えて” “真っ直ぐな君が羨ましかった…” “” “次は、もっといい人に出会って幸せになれよ” “…” “約束した花見、行けなくて、ごめんな” 鷹左右 春輝 END
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加