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貴方だけだったんだ。
僕に、僕自身に興味を持ってくれたのは。
たとえそれがどんな目的でも、誰かが僕の持つ枠組みに囚われずに、僕自身を必要としてくれたことが嬉しくて、だめだとわかっていても僕はその手をとった。
期待しては駄目だとわかっているけれども、貴方が僕の名前を呼ぶたびに心が躍る。
偽物だとわかっていても、その笑顔で僕はいっぱいになるんだ。
空っぽだった箱は気付けば貴方でいっぱいになっていた。
きっと、貴方にとって僕はただの使える駒と同じなんだろう。
だけど、それでも構わない。
僕は貴方のおかげて意味を知った。感情を覚えた。痛みを知った。醜い心ができた。幸福という事を知った。喜びを知った。
だからもう後戻りはできない。いや、しないんだ。
貴方は僕のことをどう思っているのかはわからない。
ただわかるのは、僕は貴方を愛しているということ。
だから、余計なものなんてねだらない。
貴方の側にいるだけでいいんだ。
そして、貴方が幸せになっているのを間近で見続けられれば。
だから、余計な感情はバレないように表面で鍵を掛けた。
鍵をかけたら、貴方はだんだん僕を呼ばなくなった。
いつしか、僕は貴方の世界から姿を隠してしまった。
それでも良かったんだ貴方が幸せなら
なのに……
どうして貴方の隣りにいるのは彼なんですか?
まだ、女だったら諦めがつきその生まれた子を彼と同じように愛することができたのに。
貴方は彼の横で最後に僕ヘ見せたような笑みを見せ続けている。
貴方の世界には僕はもう存在しないのだろう。
でも、僕の世界には貴方しかいない。
だから……………………………
あれから時が過ぎ貴方は鳥籠を抜け、彼とともに城を作った。
貴方は何か惹かれるような眩いものだから、貴方の、貴方達の城にはたくさんの人々が集まった。
貴方が僕を忘れてしまったらならそれでいい。
どうせならずっとそのまま忘れていて欲しい。
じゃないと、貴方達が作った城にできた新しい箱庭に紛れ込んでいる僕という異物はきっと排除されてしまうから。
だから、今日も仮面をつけて別人になりきりずっと貴方のそばに
初めてみたとき俺はあの子に惹かれたんだ。
だから自分の物にした。
俺はいつでもあの子のそばにいた。
あの子は俺が名前を呼ぶたびに嬉しそうに俺を見る。
その表情が好きだった。
そんな時間は長く続かない。
程なくして、俺は忌々しいアイツによって鳥籠に入れられた。
その頃だっただろう。
あの子がおかしくなったのは。
俺が呼んでも、笑っても、その表情が動くことはなくなった。
もう一度あの表情が見たい。
そう思って何度も名前を呼んだけれども駄目だった。
そんなときアイツが俺を見てとても嬉しそうに笑ったんだ。
その時にわかった、アイツがあの子になにかしたのだと。
そのために俺は彼に協力を依頼した。
彼の協力のおかげでアイツはもう二度と現れることはなくなった。
………………………………なのに、あの子は俺の前から姿を消した。
同じ鳥籠の中にいるのはわかっているのに、会うことはできない。
そのことが、酷くもどかしかった。
だから俺はまた、彼に依頼したんだ。
俺とあの子と彼は鳥籠から抜けた。
依頼通り彼は俺とあの子を捕まえるための新たな鳥籠を城として作った。
たくさんいるその他大勢の中にやっとあの子を見つけた。
仮面を被り、他人として新しく俺と関係を持ったあの子。
あの子がどう思っているかなんて、あの鳥籠を抜け出すと決めたときにわかっている。
だから、俺はまたあの子を俺の物にする。
あの子がどれ程逃げても追いかける。
あの、心から愛しているという表情を見るために。
そのためには、新しい鳥籠に鍵をして逃げれないように。餌で誘き寄せて捕まえる。
捕まえたら、あの子に心から伝えるよ?
「愛してる」
ってね。
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