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「――つまりこの子は、高梨さんのお姉さんの子供なんですね」
俺の作った特製パフェを食べている美織ちゃんを見つつ、俺は高梨さんに問いかける。
「……そうだ」
高梨さんはパフェに夢中なようで、スプーン片手に上の空な返しをしてくる。
俺の分は見事に美織ちゃんの分へとシフトチェンジしてしまったが、致し方ない。本命の高梨さんが食べてくれれば、それだけで満足だ。
「美味しいわ。川神。やるじゃない」
貴族ごっこの抜けきらない美織ちゃんは、俺に向かってスプーンを向ける。
「それはそれは。光栄です、お嬢様」
笑顔を向けると、美織ちゃんは満足そうに再びパフェへと意識を戻していく。
大口開けて、バナナとクリームを一緒くたに食べる姿は貴族とは程遠い。
「別に隠す必要ないじゃないですか」
「……遊びに付き合う姿を見られたくなかったんだ」
言い訳しながら、眉間に皺を寄せて苺を口に運ぶ高梨さんはなんだかシュールだった。
もっと美味しそうに食べてほしいのに、美織ちゃんの手前だからか堪えているのかもしれない。
視線をずっとパフェに向けられるところを見ると、気に入ってはもらえているようだ。
「いつまで預かるんですか?」
「一週間ほど」
「えっ?」
一日や二日の話じゃない事に驚く。そんなに長い期間、この二人は上手くやっていけるのだろうか。俺の方が不安になってしまう。
「川神の言いたいことは分かる。俺に務まるのかと思っているんだろ?」
やっとパフェから視線を俺に向けた高梨さんが、探るような目を向けてくる。
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