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「なにそれ、ひどくない!?」
「でしょでしょ? もう、私げんかーい!」
その日の放課後。「あんまり他人に話すことでもないから」と我慢していた私の糸はプツリと切れて、一切合切を親友の真亜美にぶちまけていた。
場所は駅前のカラオケ店。メクドナルドでも良かったんだけど、他の人に聞かれたい話でもなかったので、個室のあるこちらにしたのだ。
「ん~。弥生っち、最近何だかカリカリしてるな~、と思ってたけど、まさかそんなヘビーな事情が。……ウチにでも避難する?」
「うん。いざとなったら、お願いするかも……。別にさぁ、お母さんがどっかの男とヤリまくってようと構わないんだけどさぁ……家に連れ込むのは、ホントやめて! って感じ。私が襲われでもしたらどうするつもりなんだろ?」
カラオケは一曲も歌わぬまま、飲み放題のドリンクを物凄い勢いで消費しながら、ひたすら真亜美に愚痴る。
みっともないことこの上ないけれども、真亜美は嫌な顔一つせず、私の話を聞いてくれていた。持つべきものは親友だ!
「そのオッサン、二人きりの時に弥生に近寄って来るんでしょ? マジヤバイよ、それ!」
「うん……出来るだけ二人きりにはならないようにしてるんだけど、今朝みたいにうっかり出くわすこともあるから、ホント怖い」
「とりあえず、スマホはいつも取り出せるようにしておこっか? あと……こういうアプリもあるからさ――」
その後、真亜美が調べてくれた「防犯ブザー」アプリや、ボタン一つで登録した番号にメッセージが送信され110にも通報してくれるという「SOS」アプリをスマホに入れてから、私はとぼとぼと帰宅した。
――でも、真亜美には悪いけど、結局それらのアプリが役に立つことは無かった。
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