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決勝戦が行われる今日は、その行く末を見守るべく、14万人を越える観客が詰め掛けていた。
「さぁ、昨日のハイライトをごらんいただきましたが、さすがですね~! この花火イベントだけで一気に好感度と愛情ポイントを合計28も荒稼ぎしています。さすがはファイナリスト!」
テンション高く響くのは実況者の「ぽん・PEN吉」の声だ。
「ってーわけで! 今日はいよいよ大会最終日! ファイナリスト二人による、頂・上・決・戦!
二人のプレイを、一瞬たりとも見逃すな! Don't miss it!」
14万人超の観客が唸りをあげた。12階席の二箇所からゴンドラが現れ、ファイナリストを乗せて中央ステージへ下りていく。それぞれのゴンドラの映像は、ドーム各所に備えられた超巨大スクリーンにリアルタイムで映し出されていた。
プレイヤー名【アルカリ三世】。
「ロマン派の巨匠」と呼ばれた名人である。ストーリーやイベントを、より効果的に、扇情的にクリアしていくプレイスタイルには「信者」と呼ばれるほどのファンも多い。
冒頭の花火イベントは準決勝における彼のリプレイだ。現在総合ポイントでは2位に甘んじているが、この決勝での逆転が期待されている。
プレイヤー名【紗魅ィ・蒼月】。
「氷血の超絶職人」の異名を持つ、技巧派の達人である。常に最高の効率を求め、全てに於いて完璧なプレイスタイルは何人の追随をも許さない。昨日までのプレイですでに【虹7】全てのフラグを立て終えており、決勝戦では7人連続の【一線越え】フラグ回収プレイが期待されている。
現在の総合ポイントはダントツの1位。初代R18ゲーム王の栄冠は彼の目の前にぶら下がっていると言っても過言ではない。
二人はゴンドラを降りると、それぞれ自分用のプレイブースへと消えていった。
【アルカリ三世】のブースには四畳半ほどの広さで中央にコタツが置いてある。そのコタツの上にPCが置かれており、彼は着ぐるみのようなその巨体でコタツの前に座った。
一方【紗魅ィ・蒼月】のブースはより狭い空間だったが、コクピット型の内装でPCモニタ、操作デバイスともに最新鋭のものである。コンマ一秒単位の繊細な操作を全て正確に拾い上げる事に特化させていた。彼はいつものラフカジュアルないでたちでコクピットに収まった。
二人とも、大きなサングラスと、顔を覆うマスクをつけていた。
日本時間17:00。グリニッジ標準時8:00。
――GAME START!!――
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