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――GAME OVER――
戦況としては、圧倒的に紗魅ィがリードしていた。運も彼に味方していた。高難易度と言われる【双子姉妹との3Pイベント】を発生させることにも成功したのだ。これでこの日ここまでの攻略人数は7人。虹7の残り3人を攻略できれば、前人未到の二桁攻略となる。
一方のアルカリ三世はまだリィシャ・オレンジの一人だけ。このペースでは残り2人の虹7攻略だけでもギリギリだろう。
現在紗魅ィのキャラ【蒼月】はバイクを使用して次のイベント地点に迫っており、アルカリ三世のキャラ【魔夜】は徒歩で図書館に向かっていた。
効率を求め、一秒たりとも無駄にはしない紗魅ィのプレイスタイルとは真逆を行くように、アルカリ三世はじっくりとプレイを進めていた。
だが、運を味方につけているのは、やはり紗魅ィのようだった。
魔夜は足を止めた。公園のベンチに人影を見つけたのだ。周囲は暗くなり始めているが、人影の主が誰かは見て取れた。紅林結愛だ。ミス虹光学園でアイドルの卵である。
今夜、「相談したいことがある」と呼び出されていたが――。
アイドル活動の事で家族と諍いが生じていることは以前から聞いていた。その事で家を飛び出してきたのだろうか。
図書館での約束まではまだ余裕がある。だが、思いつめた様子だった結愛の相談をきちんと聞けば遅れてしまうのは確実だ。だとしても、一人でベンチに座っている結愛を放っておくわけにもいかない。
魔夜は意を決して、スマートフォンを取り出した。
「さぁアルカリ三世ピンチだ! なんとここで虹7ナンバー1の紅林結愛と遭遇! 公園イベントが始まってしまった! 図書館イベントに間に合うのか!?
一方、紗魅ィは快調そのものだ! 順調に虹7の攻略を進めているぞ!」
既に陽は落ちて、虹光町は夜の帳に覆われていた。蒼月はつい先ほどナンパしたカフェ店員、紗希を後ろに乗せ、河川敷をバイクでとばしていた。残る予定は紫乃森梨絵だけだ。今からなら十分二人とも落とせる。一日で11人斬り、それは彼にとっても記録的な事だった。
蒼月はわざとスピードを上げて紗希をしがみつかせると、川沿いのホテルへバイクを走らせた。
すっかり日が暮れた道を、魔夜は全速で走っていた。約束の時間を大幅に遅れている。結愛と会う前に電話を入れておいたのだが、予想外に遅れてしまった。
もう、帰ってしまっているだろうな――。
魔夜は焼けつくような焦りの中でそう思った。すでに図書館の閉館時間は過ぎている。
それでも魔夜は速度を緩めなかった。
図書館に着くと、案の定既に閉館した後だった。明かりの消えた図書館周辺は暗い。
人影は――見えない。
やはり、もう帰ってしまったのか――。
そう思った時、小さな声が聞こえた。
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