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あれ?
あるべきものがあるべきところにない瞬間が、この世で一番ドキッとするよね。俺は俺の中で俺に呟いた。
俺の名はタカシ。高校一年生。今さっき登校してきて、教室に着いて、今日の授業の準備をしようとカバンを開けたところだ。
昨日の夜、準備したはずの提出レポートがカバンの中になかった。
「昨日、確かに準備してたのに」
確かに俺はレポートを机の上でまとめた。まとめて、ファイルに挟んで、机の上に置いて……。
「机の上だぁ~」
俺は机に両手をついてうなだれた。
どうしようかな。家に取りに帰る時間はないな。などと考えていると、
「わすれものですよ」
やわらかく幼い声が聞こえた。
「わすれものですよ」
また聞こえた。俺は声のした方へ振り返った。見ると白い猫のようなヤツが二本足で立っていた。
「タカシくん。わすれものしてますよ」
今度はハッキリその猫が手(前足?)を動かしながらしゃべるのを見た。
「え、なに? なにお前っ!」
俺は驚いて大きな声を出した。
「ねこはねこですから、しゃべりますよ」
「ねこ?」
俺は目の前にいる自称「ねこ」をまじまじと見つめた。ねこといっても、明らかに動物の猫ではない。背丈は俺たちより少し低いぐらいで、ゆるキャラのような、ぬいぐるみのような見た目で、ロボットのような質感を持っていた。
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