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「母さん!」
「む、ママさん、なぜここに?」
「ねこさん。すいません。うちの息子がワガママ言いました。でも、今日の所は私に免じて許してやってください」
母さんが俺の前に両手を広げて立ちふさがり、ねこに許しを乞うた。
「母さん、なぜここに?」
俺が問いかけると、母さんは俺にファイルを手渡した。
「課題レポート……」
「『わすれものねこ』さんが教えてくれたの。でも『おとどけねこ』じゃないから届けてくれないだろうと思って、母さん持ってきちゃった。」
母さんが俺に微笑んだ。
「ダメねえ。本当は忘れ物を先生に叱られた方がタカシの為になるんだろうけど、ついついタカシを甘やかして、忘れ物届けにきちゃって。母さん失格ね」
「母さん!」
俺は母さんに抱きついた。母さんの底抜けの優しさに感動した。
「母さん、俺、もう忘れ物しないよ!」
「そうかい。そうしてくれるとお母さん安心するわ」
俺と母さんのやり取りを見ていたねこは、振り上げたコブシをゆっくりと降ろした。
母さんはあらためてねこにお願いをした。
「ねこさん。どうか……」
「わかりましたよ。ママさん」
ねこから、さっきまでの殺気は消えていた。
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