王都の戦い

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 兵士たちと龍は(にら)み合っていました。剣で立ち向かっても勝てないとわかると、兵士たちは攻めかかるのを止めて、一定の距離を置いて様子を見るようになりました。龍が近づくと逃げ、遠ざかると近づいてきます。龍はその繰り返しに、面倒くさいと思うようになりました。こんな退屈な作業のためにここに来たのではないのです。 「龍よ」と、若い男の声がして、龍は振り返りました。馬に乗ったロムルス王子が、瓦礫(がれき)の山の上で剣を振り上げています。 「俺は第一王子ロムルス。我が国にいきなり攻め入るとは無礼である。お前を打ち倒してやるから、覚悟しろ!」  龍はせせら笑い、羽を広げて王子に突風を吹きかけます。馬が恐れおののいて、後ろ脚で立ちそうになるのを、王子は必死になだめました。そして馬がやっと落ち着きを取り戻したところで、拍車を入れます。馬は龍の突風をかき分けて進みます。王子は剣が届く間合いまでくると、渾身の一撃を放ちました。  それは龍の身体に確かに傷を付けましたが、皮膚(ひふ)を貫通していません。龍は(ひる)むことなく爪の一撃を放ちました。王子は身をかがめて避けます。  動きを止めれば致命の一撃を受けてしまいます。王子はまた馬に合図すると、龍の背後に回るように移動しました。しかし、そこを龍の尻尾がうなりを上げて()ぎ払います。王子はとっさに馬を跳躍(ちょうやく)させました。馬の(ひづめ)のすぐ下を、太く重い尻尾の一撃がすり抜けていきます。空振りした尻尾はそばにあった石造りの建物に当たり、倒壊させました。  王子が全身に伝わる冷や汗を感じたそのとき、鐘楼(しょうろう)の鐘が鳴りました。賢者の合図です。
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