龍の山

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 山の地下深くに広がる闇の深奥(しんおう)で、龍は身じろぎ一つせずに、巨体を横たえていました。  龍の下僕たる不死者たちは、付近の王国を襲っては奴隷を集め、その地に壮麗(そうれい)な宮殿を築きました。  龍はその中心に座していましたが、少しも嬉しそうではありませんでした。  龍の眼前には、観客席を備えた巨大なコロシアムがあります。そこでは時おり、奴隷同士の剣闘試合や演劇が開かれていました。不死者たちは、奴隷が生き残りをかけて殺し合う姿を見世物として楽しみ、あるいは演劇に興じ、美食に舌鼓を打っていました。  しかし龍はそれらの出し物を少しも面白いとは思いませんでした。  龍は悠久(ゆうきゅう)の時を生き、不死者たちには王と呼ばれていましたが、実のところ、自分を(あが)める不死者にも、人間にも、さしたる興味はもっていなかったのです。 「我が(あるじ)。我が王よ」  闇の中に響く声があり、一人の不死者が現れました。不死者の女王・パラメシアです。千年ほど昔、この地で眠り続けていた龍を見つけ、自らの王国の主として迎えた女性です。見た目は二十代後半ごろの人間に近いのですが、その実、龍と彼女のどちらが年上なのか、本人たちにもわかりません。  パラメシアは赤い瞳を輝かせ、龍に語りかけます。
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