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次の日の朝、選抜された戦士たちは続々と城門に集結しつつありました。
頑丈な樫の木でできた、囚人の護送につかう馬車が用意され、龍はその中に閉じ込められました。馬車には鉄格子がついていて、中を確認できますが、とても小さなものなので、そこから龍が逃げ出すということは不可能です。
馬術と武術に優れたえりすぐりの兵士と騎士が、その周囲を固めます。
王子は鎧と剣を身に着けて、愛馬にまたがって現れます。その後ろには、馬におっかなびっくり乗っている賢者がいます。
民衆は喝采を上げ、あるいは、旅の無事を祈りました。
王子は護送馬車の鉄格子を覗き込みました。馬車の暗がりにはもちろん龍がいて、機嫌悪そうに王子を睨みつけます。龍とはいえ、少女の姿をした存在を裸のままにしておくのは気が咎めたために、下着と肌着を身に着けさせています。ですから、龍は傍目には薄着の少女にしか見えません。
次に、王子はこれから苦楽を共にするであろう部下たちを一瞥します。いずれも体格に優れ、眼光鋭く、重そうな鎧と武具を軽々と扱い……いや、一人だけ例外がいます。
あきらかに若く、少年といっていい顔立ちと体格。赤毛にソバカス。身に着けている鎧は革製です。武器は腰に付けた短剣と、背中に負っている弓矢だけです。その若すぎる兵士を見て、王子は声を出してしまいます。
「なんだお前は? お前のような兵士が選抜されたというのか?」
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