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馬鹿にされたと感じたのでしょうか。少年兵は息を吸い込みつつ胸を張り、精一杯に自分の体を大きく見せようとしました。
「俺はケシュ族の戦士、アルゾ。弓と馬の扱いでは、誰にも負けません」
「ケシュ族? 西の遊牧民か」
そこに、王子の側近が現れて、後ろから耳打ちしました。弓の扱いが上手な兵士は、龍の襲撃で大半が戦えない状態にあり、健康な生き残りの中で一番弓が上手いのは、このアルゾしかいないというのです。
少年兵を連れて行くということに、王子は少し悩みましたが、他に人材がいないのでは仕方がありません。
「よろしい。同行を許そう」王子はアルゾに告げます。「だが、少年兵とはいえ特別扱いはしない。危険になっても誰かが助けてくれることは期待するな。戦力にならなければ置いていく。それでもいいな?」
「はい!」と、アルゾは無駄に元気な声で返事をします。王子は苦笑しました。
やがて、出立の時間になり、王子は部下に向かって檄を飛ばします。
「この旅が終わるときは、龍が永遠に滅びるときだ! 我々は龍殺しとして、歴史に名を刻むだろう! 子々孫々まで語られる、英雄になるのだ! さあ、出発だ!」
城門が重い音を立てて開き、一行は、一路東へと向かいました。
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