不死者パラメシア

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 王子率いる一行が都市の城門を抜けると、市民の歓迎の声が出迎えました。大通りに面した家々の上階から、色とりどりの花が投げかけられます。花は王子の鎧の上に降り積もって、鮮やかな模様を付けました。他の兵士たちも似たような有様です。  邪龍がどれほど恐ろしい存在かは、龍の山から離れた地でも、よく知られていました。そして、王子と賢者が王都で龍を捕えた話は、噂話として広まっていました。王都には多数の商人が出入りしていて、人の口に戸は立てられないのです。  これから英雄となる人々が来訪したとなれば、普段から娯楽に飢えている市民たちも、都市の有力者たちも、これを機にお祭り騒ぎをしたいと思うのも当然のことでした。  市長や大商人をはじめとする有力者が、もろ手を挙げて彼らを歓迎しました。  都市の会議場も宿屋も酒場も、すべて龍退治の一行を歓待するためにあけ放たれ、温かいご馳走が用意されていました。一行はおおいに飲み、市民たちと歌い踊り、夜をすごしました。兵士たちはすっかり機嫌をよくして、温かい寝床で眠りました。  こうして城塞都市(じょうさいとし)の住人も龍退治の一行も寝静まったころ。
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