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悲鳴や獣のようなわめき声を聞いて、ロムルス王子は目を覚ましました。まだ酒が残っていて、意識はぼんやりしています。悪い夢でも見ているのかと思いましたが、血の臭いが漂ってきて、これは現実だと教えられます。
王子は剣を取り、宿から出ました。
城塞都市は、恐怖で埋め尽くされていました。街の通りにはかがり火が灯されていて、その光が断片的に街の惨状を浮かび上がらせています。逃げ惑う市民がいて、それを追い回す異様な人影がいます。
王子は道端に無残に食い散らされた死体が転がっていること気が付きます。先程の血の臭いの出処はここでしょう。
「食屍鬼か!」王子は襲撃者の正体に気がついて叫びました。
食屍鬼は不死者の中で一番下等な存在です。上級の不死者に血を吸われるなどして死んだ人間が、動く死体となって蘇り人を襲うものです。頭は悪く、武器も使えず、常に飢えに苛まれています。弱いとはいっても、それに殺された人間も食屍鬼となるので、駆除が難しいのです。
王子は宿に取って返すと、客室のドアを片っ端から叩いて、自分の兵士を起こして回ります。賢者も起きてきて、慌てて身繕いを始めます。
「馬車だ! 馬車を守れ!」王子はおっとり刀で集まった兵士たちに命令します。
食屍鬼たちが群れをなして押し寄せてきます。
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