13人が本棚に入れています
本棚に追加
「わが主を連れ去ったのはお前たちだな?」
女が問います。
「お前は不死者か? 龍がいっていたパラメシアとはお前のことか?」
王子が問い返すと、女は微かに嬉しそうな顔をしました。龍が自分のことを話題にしたのが快感なのです。
「そうだ。私はパラメシア。不死者たちの女王。名前を知っていてくれて光栄だ。第一王子ロムルスよ」
不死者が自分の名前を口にしたのを聞いて、ロムルスは嫌悪の感情を抱きました。
「俺の名を口にするな。汚らわしい不死者めが!」
パラメシアは冷笑で応えます。
「威勢がいいのは今この時までのこと。お前たちの王都でわが主がどうなったのかは、私の耳にも入っている。王子であるお前が大事そうに守っているその馬車には、わが主が閉じ込められているのだろう?」
王子は歯がみするしかありません。この都市の住人さえ知っていることを、パラメシアが知らないはずがなかったのです。
パラメシアは猫なで声のような甘ったるい声を出して、眼下の護送馬車に呼びかけます。
「わが主よ。今しばらくお待ちください。こ奴らを皆殺しにしたあと、お助けいたしますから」
その声を聞いて、龍は鉄格子から外をのぞき見ました。龍は誰かに助けられるという経験が一度もありませんでした。だから、このような状況は新鮮で、龍は面白がっていました。鉄格子から見える視界は狭く、王子たち一行の姿も、肝心のパラメシアの姿もよくみえなかったのが、少々残念でしたが。
賢者が魔法の言葉を唱え、その指先から眩い光の矢がパラメシアに向けて放たれます。しかし、パラメシアが両手で短く印を結び「否定」を意味する古代語を唱えると、たちまち光の矢は消し去られてしまいます。
最初のコメントを投稿しよう!