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ルーダリアの賢者は周辺国でも名高い術者です。
彼だからこそ、古代語で記された龍を封じる魔法が使えたのです。その彼の魔法が、パラメシアには通用しません。兵士たちの間に動揺のうめきが広がります。
「さあ、お前たちは慈悲深く、瞬時に殺してやろう。そして食屍鬼に作り変えて、王都に返してやろう。お前たちの腐りはてた姿を見た王都のもの共は、きっと、わが主に逆らったことの愚かさを、死に際に悟るであろう」
パラメシアが両手で印を結び、魔法の詠唱を始めます。周囲の空気が焦げ臭くなり、電撃の火花が跳ねまわります。
賢者は対抗して何かの術を唱えようとしますが、それが絶望的な試みであることは、彼の表情を見ればわかります。
そのとき、一本の矢が火花を切り裂いてパラメシアに向けて放たれました。アルゾが仕掛けたのです。パラメシアは面倒くさそうな顔で、片手でその矢を叩き落とします。しかし、印が崩れたために、わずかながら魔法の詠唱が途切れました。
「アルゾ君! 矢を、もっと撃ってくれ!」
賢者の声に、アルゾはうなずきます。彼は左手に弓を、右手には五本の矢をとり、間髪入れずパラメシアに向けて攻撃を続けます。正確に急所を狙っているのでパラメシアは矢を無視することができません。そして矢を凌ぐには印を解かなければなりません。
その隙を、賢者は見逃しませんでした。
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