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夜が明けると、兵士たちは怪我をした仲間の手当をして、まだ都市に残っている食屍鬼を片づけました。
食屍鬼の多くはこの都市の住人が転化したものであったため、生き残った住人たちからは抗議を受けましたが、これはどうしようもありません。食屍鬼になったものを元に戻す方法は存在せず、首を切り落として焼くしかないのです。
都市の各所で、火葬の火が焚かれました。人々の嘆きの声は、いつまでも止むことがありませんでした。
王子と賢者は、生き残りの兵士たちを集めて、今の状態を確認しました。すでに一行の四人に一人が戦死しているか、戦えない状態にありました。しかもパラメシアには手傷を追わせたとはいえ、まだその姉妹がいるのです。
王子は確認を済ませたあと、賢者に尋ねました。
「つまり、今のまま進んだとしたら我々はどうなる? 率直な意見をいってくれ」
賢者は青い顔で即答します。
「次の街に到着する前に、全滅するでしょう」
「絶望的というわけか」
「恐れながら。しかし、手がないわけではありません」
「何か考えがあるのか?」
賢者は懐から丸薬をとりだして、それを一つ口に放り込み、飲み下しました。酷い臭いがする上に毒性もあるので賢者本人も嫌っている薬ですが、魔術の使いすぎで体調を崩したときには役立ちます。逆にいえば、その薬を使わなければいけないほど、賢者の消耗が激しいのです。
薬のムカつくような臭いが喉を過ぎていくのを待ち、賢者は提案をしました。
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