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「今回、我々があの女を撃退することができたのは、あの女が油断していたからです。不死者は我々が戦ってかなう相手ではありません。今後は不死者に見つからないように行動するべきです。そして、見つかってしまったら逃げるべきです」
王子は逃げるという言葉が不快で顔をしかめます。賢者はそれに気が付かないフリをして、話を続けました。
「我々は目立ちすぎます。護送馬車を兵士で囲みながら移動するのですから、これは当然です。そこで、二つの対策を立てます。一つ目は、この街で護送馬車を複数調達し、いくつか囮の部隊を作って不死者たちの目を騙します」
「ここの市長に協力を仰がねばならんな。それで、二つ目の対策はなんだ?」
「二つ目は、馬車はすべて囮として、龍の護送は一人の兵士に任せます」
「なんだと?」
「本物の龍は、護送馬車には乗せません。パラメシアはおそらく龍が馬車の中に閉じ込められているという先入観を持っているはずです。その裏をかいて、龍を馬に乗せ、一人の兵士に護送させるのです。龍は外見上ただの少女にしか見えませんし、腕力も外見相当です。兵士一人でも護送できます。兵士一人と少女一人だけが馬に乗って移動しても、目立たないでしょう」
「なるほど……だがその大役は誰に任せる? 私がやるべきか?」
「いいえ。貴方や私は顔を人に知られています。あくまでも目立たない人間に任せるべきです。万が一、不死者に発見されても、応戦できる能力があることが望ましいでしょう」
「それは、誰のことだ? その口調では心当たりがあるのだな?」
「はい。アルゾが適任かと思います」
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