旅の始まり

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旅の始まり

 その日の午後、一行は出発しました。  (おとり)の護送馬車とそれを守る兵士という組み合わせの部隊が、全部で七つ、続々と城門を抜けて東への街道(かいどう)を進んでいきます。  護送馬車は市長に命令して用意させました。  馬車の中には、(おとり)として龍にそっくりの格好をした女性が一人ずつ乗っています。この女性たちも、兵士たちの大半も、城塞都市(じょうさいとし)の住人から志望者を募って配置しました。昨夜の襲撃(しゅうげき)で家族や同僚を失った人々が、龍を滅ぼし、不死者たちを倒すべく立ち上がったのです。  (おとり)の護送団の中には、本物の王子と賢者が率いるものが一つだけありました。他はみんな、王子と賢者の服装を真似た騎士が率いています。彼らは城塞都市(じょうさいとし)を出ると、枝分かれする街道(かいどう)をバラバラに進むことになっています。不死者たちの目をそらすことができれば、それだけ本命のアルゾが見つかってしまう危険を減らすことができます。  そのアルゾと龍は、一番最後に、都市の城門ではなく、小さな通用口から出発する手筈(てはず)でした。
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