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ファルトは悲鳴を上げますが、パラメシアは容赦せず締め上げます。ファルトが不死者でなければ、とっくに首を折られて死んでいるでしょう。
「我らが主に効果があるかどうかはわからぬ。だが、古代の遺跡から見つけた呪文となれば、無視するわけにもいかぬ」
「離して、離して姉さま! 痛いよ!」
パラメシアは予告もなく手を放し、ファルトは地面に叩きつけられます。
「お前は他の妹たちに招集をかけろ。集まり次第、ルーダリアに攻撃を仕掛ける。奴らが仕掛けてくる前に、叩き潰してくれる」
「姉さま、痛いです」
ファルトが恨みがましい目で見上げると、パラメシアは冷酷な目で見下ろしています。
「主様の前で、私を姉さまと呼ぶなといったはずだ。興が削がれるだろうが」
ファルトは怯え、小さな声で返事をします。
パラメシアは龍の前でいつも何かを演じています。今は龍の第一の家臣、昔は龍の第一の信奉者、その前は龍の第一の友でした。その時々の設定に合わせて、妹たちには完璧な演技を要求しました。それを崩されて素の呼び方をされることを、彼女はとても嫌っていました。
そんな茶番を見て、当の龍はまた一つあくびをしました。そして、巨体を起こし、四枚の羽を広げました。羽ばたくたびに空気が風となり、暴風となり、宮殿を吹き抜けてゆきます。
龍の異変に、パラメシアは問いかけます。
「我が主よ。いかがなさいましたか?」
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