龍の山

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 龍は答えます。 『この者どもに興味がわいた』  口を動かすことなく、ただ龍は考えただけで自分の意思を伝えることができます。割れ鐘のような心の声の力が、パラメシアとファルトの頭蓋(ずがい)を揺さぶります。彼女らは、思わず自分の頭を押えました。 『この者どもが希望としている、龍をも倒せると称する魔法。この目で確かめてみよう』  龍は偉大な力を持ちますが、傲慢(ごうまん)でした。そして、とても退屈していました。  暴風は龍の巨体を持ち上げ、宙に浮きあがらせます。 「主様(ぬしさま)」パラメシアは大声を出しました。「(くだん)の魔法が(いにしえ)のものであるとすれば危険です。本当に、過去に龍を倒したことがあるのかもしれません。ここは私めにお任せを」  しかし、その声は龍の羽の音にかき消されてしまいました。  龍は宮殿の上に広がる空洞へ飛び、山の頂にある火口から、外へと出ました。  夜の冷たい空気が龍の身体を洗います。星々の光が、闇色の龍を蒼く照らしています。龍は久しぶりの刺激に身震いしました。  龍にとって人間の抵抗は娯楽の種でした。剣を手にした英雄や、魔術を操る魔法使いが、龍を倒すべく立ち向かってくることは、過去何度もありました。そうした人間たちは、龍が本気で戦うとすぐに死んでしまいます。だから龍はわざと力を絞ってゆっくりいたぶったあと、飽きたら炎で焼き払うのです。  最近は、パラメシアと彼女の妹たちがそういった人間を倒してしまうので、龍は密かに不満でした。  龍を倒せる魔法というのは、なかなか面白そうです。肩透かしかもしれませんし、本当に強力な魔法かもしれません。一度は自分の目で見てみたいと思いました。  しかし、龍が直接王国に行かずにおけば、その楽しみを不死者たちに奪われてしまうかもしれません。それは我慢がなりませんでした。  龍は羽で夜の空気をいっぱいに受け止めて、ルーダリア王国へと向かいました。
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