王都の戦い

1/7
前へ
/231ページ
次へ

王都の戦い

 そのころ、ルーダリア王国は深い眠りについていました。  王も家臣もみな眠りにつき、今は見回りの兵隊が松明(たいまつ)を手に、王都を行きかっています。  その上空にたどり着いた龍は、眼下に広がる王都のありさまを見渡して、密かに不満の声を上げました。点々と松明(たいまつ)の灯りがあるばかりで、王宮も城壁も古ぼけています。 「なんと見すぼらしい」と、龍は思います。  人間の住居を焼き払ったことは何度もあります。大きな都市ほど人間の抵抗は激しく、それを蹂躙するのは良い退屈しのぎでした。過去に滅ぼした都市と比べると、このルーダリアの王都は見劣りがしました。きっと貧乏で兵士もあまり雇えないに違いありません。  本当にこんなところに、龍を滅ぼす魔法と、それを使う賢者などというものがいるのでしょうか?  もしも無駄足を踏ませたのであれば、この都市は腹いせに炭にしてしまうつもりでした。そう決めると、龍は大きく一呼吸しました。
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加