10人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
龍の山
その世界の中心には、一つの巨大な山がありました。
呼び名は定まっていません。たくさんの国々がそれぞれ違う名前で呼んでいるからです。
ある国は死の山。
その隣の国は黒い山。
その向かいの国は影の山……というふうに。
しかしどの国も、簡潔で不吉な名前を付けていることは共通でした。
とある王国では、その山をこう呼んでいました。「龍の山」と。
世界の始まりから在ったという黒い龍が、根城とする山。
龍の力に憧れた不死と不浄のものどもが集う山。
気まぐれに人を襲い、蹂躙し、数しれぬ勇者と王者を飲み込んできた、闇の王国。
すべての定命の者たちにとって恐怖の地であったのです。
最初のコメントを投稿しよう!