龍の山

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龍の山

 その世界の中心には、一つの巨大な山がありました。  呼び名は定まっていません。たくさんの国々がそれぞれ違う名前で呼んでいるからです。  ある国は死の山。  その隣の国は黒い山。  その向かいの国は影の山……というふうに。  しかしどの国も、簡潔で不吉な名前を付けていることは共通でした。  とある王国では、その山をこう呼んでいました。「龍の山」と。  世界の始まりから()ったという黒い龍が、根城とする山。  龍の力に憧れた不死と不浄のものどもが集う山。  気まぐれに人を襲い、蹂躙(じゅうりん)し、数しれぬ勇者と王者を飲み込んできた、闇の王国。  すべての定命(じょうみょう)の者たちにとって恐怖の地であったのです。
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