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1.出会い
風が吹いている。
青い空に浮かぶ白い雲をゆっくりと流していく。
ムカつくくらい白くて、青くて、キラキラ輝いている。
「ダイキライ」
小さく呟いた言葉は誰に届くこともなく、風に溶けていく。
霞月は屋上のベンチに横になっていた。
暑いとか、寒いとか、そんなことは関係ない。
とりあえず今は眠気の方がよっぽど勝る。
眩しい日差しは幼い頃走り回って遊んだ夏の日差しを思い出させる。
夏が近い――。
脳裏に浮かぶ光景は、涙が出るほど懐かしく、地獄絵図のように苦しい。
胃がムカツクほどに輝く太陽を遮るように目を瞑り、深呼吸をする。
吸い込んだ空気は澱んだ都会の匂いがする。
――気持ち悪い……。
そしてすぐに眠りについた。
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