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「まあ、それなりに」
もちろん驚いたことは驚いた。
だがそれは菊池の言っているニュアンスからは少し外れるはずだ。
惺には今日まで何故叔父がごまんとある探偵事務所の中から、決して社会的信頼度が高いとは言い難い椎葉を紹介したのか不思議で仕方なかった。何故椎葉が惺の依頼を無償で受け、「餓鬼の戯言」と悪態をつきながら霞月を助けるのか分からなかった。
けれど霞月の一言でそれは全て繋がったのだ。
叔父が霞月の何を知っているかは分からない、でも恐らく仕事で彼女の家族の事故を調べていた際にその繋がりに気づいたのだろう。
菊池はふっと表情を緩めると穏やかな声を出した。
「うん、そりゃ、そうだよね。
唯月の親父は昔からどっぷりそっちに浸かっちゃってて、唯月は小さい頃からそれを嫌ってたんだよ。それで結局、大学在学中に家族とは縁を切ったんだ。でも別にそれで揉めることもなく「家族もその方がいいだろうね」って感じで結構あっさりしてたらしいよ。まあ、元々正義感が強くて、弁護士目指してたくらいだからね。
……ただ千香ちゃんの方はそうはいかなくて、就職してすぐに結婚の運びになった時に、まだ存命だったお父さんに勘当されてるんだ。そう言った関係もあって伯母さんは霞月ちゃんに元々いい印象持ってなかった上に、唯月がまだ病院にいる時に俊流、唯月の兄貴と鉢合わせしちゃったもんだから、まだ繋がってるって信じてるんだ。実際はそんなこと一切ないけどね」
「でも椎葉はそのお兄さんと繋がってるんですよね?」
「らしいね。椎葉さんが一回見かねて俊流に霞月ちゃんと話すように説得したって言ってた」
驚きに目を瞠る。
「え?」
「学校で待ち伏せたって」
それは初耳だし、父の兄が彼女に会いに行くなど思い付きもしなかった。
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