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「子連れ結婚は実子だって難しいのに、訳わからない私みたいのを面倒見てるって分かったら一生独り身だよ?菊池さんもう若くないんだから、さっさと結婚しなよ」
――それが本音か……。
やっと納得できた。
同時にすごく霞月らしいと思う。自分勝手で、他人に興味などないように見せかけて、ちゃんと周りを見てるし、何よりも気遣ってる。
霞月はただ『菊池の幸せ』を願ってるのだ。
一方、菊池は「弁護士だから」とは言ったものの、あまりの慌てっぷりに弁護士としての手腕などどこかに飛んでいっているようだった。
「いやいやいや!なんでそうなるの?っていうか誰が……、え?霞月ちゃん彼女と話した?」
霞月は閉口してスイっと横を向いたが、それでは肯定しているようなものだ。
「それ、違うから!彼女とは文絵さんがいる時から別れ話も出てたし、霞月ちゃんの件とは一切関係ないよ。そもそも唯月と千香ちゃんの娘で、香純くんの妹である君を大切にすることで、なんで僕が不幸になると思うの。君が危ない目に合ってる方がよっぽど悲しいし、不幸せだよ」
霞月はそれでもブスッとしたまま、首を振ってボソリと呟く。
「そんなこと言ってて、私なんかの面倒見たらろくなこと起きないのに」
「はぁ?」
頑なな彼女に困惑した様子の菊池をよそに、惺は霞月が次に言い出すことが分かるような気がした。どうせまた『自分といたら悪いことが起きる』とネガティブな方に考えているに違いない。
しかしそう思っていたら、彼女の発言は僅かに斜め上を行った。
「――呪われてるんだよ」
「はい?」
「お父さんとお母さんは死んだし、おばあちゃんも死んだ。挙句に伯母さん家は家庭崩壊の危機、菊池さんは婚約破棄。絶対呪われてるんだよ」
馬鹿げているとも思えるその発言をした彼女の顔は真剣そのもので、惺は気が遠くなりそうだった。
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