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愕然とした瞳で見つめ、わなわなと身体を震わせながら彼女が叫ぶように言い放った。
「絶対に結婚なんかしない!惺の将来を取り上げて自分だけ好きなことするなんて冗談じゃないわよ!」
分かっていた反応だが、流石の惺も肩を竦めながら溜め息と共に苦笑いを漏らさずにいられなかった。
「……それはつまり菊池さんに親権を委ねる方がマシってこと?」
二択なのだからそういうことになる。
霞月が分かりやすく言葉に詰まった。
「ここで楽な方に逃げちゃダメだよ。苦しい時は傍で抱きしめてあげるから、ちゃんと戦わないと」
今は怖いかもしれないが、霞月にはきちんと自分の恐怖と向き合いながら、もう何も悪いことは起きない、と頭と心が理解する時間が必要なのだ。
そうでなければ、彼女は一生一人で大切に思う全ての人たちから逃げ続けなければならない。まだ十六歳でそんな人生は悲しすぎる。
苦しいときは一緒に立ち止まって、勇気が出ない時は手を取り共に歩く。
そうすることで霞月が前を向けることを、惺だけでなく、菊池も願っているはずだ。
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