ノアちゃんの箱舟

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 その日から、クラスの雰囲気は変わりました。  それまでの雰囲気にもっと拍車がかかったと言ったほうが正確かもしれません。  クラスメートの誰もが、ノアちゃんに好かれたいという気持ちを隠さなくなっていったのです。  放課後の取り巻きが放つ熱量は日に日に、少しずつ増してゆきました。  ノアちゃんに聞いてもらいたいと、皆つまらない冗談を大声で話します。  あるいは個性派で勝負したいのか、謎のかわいいアピールをする男子まで出てくる始末。  2週間後に洪水がやってくると、皆本当に思っているのでしょうか?  いや、そうでもないでしょう。  そんな風に言いつくろった船上パーティーでも本当は企画してるんだろうと思っていた人も、きっと多かったのだと思います。  高校生で、そんなパーティーだなんて。なんだかとってもかっこいいですね。  しかもクラスの絶対的中心人物であるノアちゃんが主催するなら、なおのこと。  彼女が選ぶ10人ちょっとの中に、入りたい。  誰もがそう思ったのでした。  そう、できれば私も。  普段は加わることのない放課後のクラスメートの輪に、私はそっと近づいてみました。  会話に参加まではしなくても、ノアちゃんたちと一緒に笑ってみたいと思ったのです。  すると輪の一番外にいた女の子が、鬼のような形相を私に向けて小さく言いました。 「てめえなんかが寄って来るんじゃねえよ、このネクラが」  私はびっくりして立ちすくみました。  そしてその女の子は、そのまま何事もなかったかのように笑顔で輪の中心に向きなおったのでした。
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